会見で質問に答えるヤマトホールディングスの芝崎健一専務(中央)。左は大谷友樹・上席執行役員=18日午後5時25分、東京都中央区、竹花徹朗撮影
サービス残業の実態を全社的に調査してきた宅配便最大手のヤマトホールディングスは18日、宅配などを担うセールスドライバー(SD)らに支給する未払い残業代が少なくとも計約190億円にのぼると発表した。対象の社員は約4万7千人で、近く一時金として支払う方針だ。
ヤマトHD、未払い残業代190億円 速やかに支払いへ
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「宅急便」を手がける傘下の事業会社、ヤマト運輸のSDなどフルタイムで働く約8万2千人を対象に、最大過去2年分の勤務時間を調査。うち少なくとも約4万7千人が違法なサービス残業をしていたことが判明したという。1人あたり平均で40万円超の未払い残業代があった計算になる。
きちんと昼休みをとらずに働いていた人が多く、始業時間前や終業時間後に作業をしていた例もあったという。未払い残業代の調査は続いており、支給額はふくらむ可能性がある。
社員に支払う未払い残業代(190億円)や、支給に伴う社会保険料の負担増(30億円)、急増する荷物の宅配を外部委託して生じたコストなど、労働環境の悪化による費用は2017年3月期に計上する。これに伴い業績予想を下方修正し、17年3月期の営業利益は1月時点の予想を240億円下回る340億円、純利益も150億円引き下げて190億円とした。営業利益、純利益ともに前年実績からほぼ半減となる。
記者会見した芝崎健一専務は「eコマース(ネット通販などの電子商取引)の急伸や労働需給の逼迫(ひっぱく)などの環境変化への対応が十分でなかった」と経営責任を認めた。幹部の処分も検討中という。(内藤尚志)
■「調査短い」社員に不満も
調査は事業所ごとに責任者が社員と面談して実施している。「大勢は見えてきたが、一部の事業所はまだ続いている」(大谷友樹上席執行役員)といい、さらに未払いが判明すれば支給する方針。パート社員も申告があれば調べるという。
すでに支払いが済んだ支店がある一方で、支払額や支払時期がまだ示されていない支店も少なくない。SDから「きちんと支払われるのか」と不安の声も出ている。北日本の営業所に勤める男性のSDは、3月初めに未払いの残業時間を申請したが、それから約1カ月間、会社から説明がないという。「時間を申請しただけで、支給額は分からない。社員へ何も説明せずに『大勢は見えてきた』と言えるのか。申請通りに2年分支払ってくれるのか。みな会社の真意を測りかねている」と不安げに話した。
別の営業所に勤める男性のSDも、3月に支店長と面談して以降、説明がないままだ。「調査の時間が短く、きちんと申請できなかった」との不満も同僚の間にくすぶっているという。(贄川俊)