記者会見で「東芝メモリ」への出資について話す産業革新機構の志賀俊之会長=東京都千代田区
政府系ファンドの産業革新機構は18日、東芝が売却に向けた入札を進める半導体子会社「東芝メモリ」に、出資する検討に入ったことを明らかにした。機構の志賀俊之会長(日産自動車副会長)は同日の記者会見で、「基準にかなえば前に進む」と述べた。今後の入札手続きで、日本勢による出資の可能性が出てきそうだ。
3月末にあった1次入札を受けて売却先候補には、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業や米半導体大手ブロードコムなど4陣営が残っている。志賀氏は「(機構との)組み合わせ先は日本企業に限らない」と話す。機構がこうした陣営と組み、5月中旬に予定される2次入札から参加する可能性を示唆した。
一方、政府内や経済界からは、複数の日本企業から1社当たり100億円規模の資金を集め、機構や日本政策投資銀行も活用して、東芝メモリに共同出資する構想がある。一定の株式を得ることで、技術の海外流出を防ぐ発言権を確保するのが狙いだ。
しかし、半導体事業は巨額投資の継続が必要で、「簡単にはいかない」(財界幹部)との見方が根強い。機構が出資検討を公表したことで、日本企業や政投銀が動きやすくなる可能性がある。
機構は2012年、東芝、ソニー、日立製作所の中小型液晶事業を統合して設立したジャパンディスプレイ(JDI)に2千億円を出資。13年には半導体大手ルネサスエレクトロニクスを、トヨタ自動車など民間8社と買収した。シャープの買収も検討し、鴻海と競ったが敗れている。(林亜季、川田俊男)