衆院予算委員会で挙手する金田勝年法相=2月
民進党は30日、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案について、金田勝年法相に答弁を求める40項目をまとめた。これまでの国会審議で野党に対し、金田氏が「成案が出てから説明する」と明言を避けてきた39項目が中心。政府が法案を提出したのを受け、改めて説明を求める考えだ。
39項目の質問者の内訳は民進33、共産4、社民2。民進の山尾志桜里氏が質問した「メール、LINE(ライン)、電話でも共謀が認定される場合があり得るか」「目配せだけで合意が成立するか」、階猛氏が質問した「毒入りカレーで人を殺す計画の際、まずカレーを作ったケースは実行準備行為にあたるか」など。今後も金田氏のこれまでの答弁を精査し、項目を増やす可能性があるという。(中崎太郎)
■これまで金田勝年法相が「法案が出てから説明する」と答弁したという質問リスト
①個々の穴を個別の法律の改正で考えていく考え方と、包括的な共謀罪で対応していくという考え方の、どこに共通点があるのか
②共謀罪、陰謀罪というカテゴリーと予備罪、準備罪というカテゴリーのその間に新しい犯罪類型を設けるという帰結になるか
③共謀罪法案と、内心の自由、思想の自由、人身の自由と考量し、どういう判断基準を用いて合憲だと判断するのか
④監視の網を広げる監視社会か、任意捜査を広げる冤罪(えんざい)社会か、どちらを目指すのか
⑤新共謀罪は、客観的に相当の危険性がなくても処罰するのか
⑥予備罪の手前で処罰するということは、共謀罪と限りなく近づけるということか
⑦テロ等準備罪は正式な罪名か
⑧(政府の示した)3事例(テロ組織が化学テロを計画し殺傷能力の高い薬品を入手、航空機を高層ビルに突っ込ませる計画を立てて乗っ取るため航空券を予約、大都市の重要インフラをまひさせてパニックに陥らせるためコンピューターウイルスの開発を開始)は立法事実なのか
⑨3事例の穴がふさがった場合、3事例以外にあるのか
⑩(3事例以外の)立法事実その4は、今現時点で、あるのか
⑪何が組織的犯罪集団に該当するのか
⑫組織的犯罪集団について、大臣と刑事局長の答弁の食い違いについて
⑬正当活動団体で性質が一変したら組織的犯罪集団に当たりうる点
⑭正当活動団体で性質が一変したら組織的犯罪集団に当たるか(具体例:自然環境保護団体→座り込み、労組→社長室閉じ込め、会員制リゾートクラブ運営会社→詐欺)
⑮脱税を企図して毎年粉飾決算を行っている会社は組織的犯罪集団か
⑯準備行為が構成要件か、処罰要件か
⑰「合意だけでは逮捕できない、合意プラス準備行為がなければ逮捕できない」ことは実務上の運用ではなく、法文上当然明らかかどうか
⑱準備行為が構成要件に該当するかどうか
⑲共謀・計画があり、その書面を実行者に渡したケース。毒入りカレーで人を殺す計画の際、まずカレーだけをつくったケース。これらは実行準備行為にあたるか
⑳実行準備行為の概念、具体的な実行準備行為にあたるかどうかを明らかにせよ
(21)実質的に重要な意義を持たず、客観的に相当の危険性が認められない程度の準備であっても、検挙が可能か
(22)合意のメモは共謀の実行準備行為か
(23)メール、LINE、電話等でも共謀が認定される場合があり得るか
(24)目くばせだけで合意が成立するか
(25)LINE等、閲覧しただけで合意となるのか
(26)共謀段階から任意捜査が可能かどうか
(27)共謀段階で、任意捜査を含めて捜査ができるのか
(28)純粋に政治上その他の主義主張に基づくテロは、金銭的その他の物質的利益に一切関係がなければ、含まれないのか
(29)目標が純粋に非物質的利益にあるテロリストグループや暴動グループは、原則として、組織的な犯罪集団には含まれないか
(30)過去の法案に、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を実施のため、必要最低限に必要なもの以外が国内担保法として入っていたかどうか
(31)対象犯罪の数の絞り込みについて
(32)対象犯罪を限定することについて
(33)TOC条約の批准には、重大犯罪の全てを共謀罪の対象にしなければいけないか
(34)対象犯罪の絞り込みについて
(35)与党に提示した案にテロという文言は入っていたか
(36)収賄、事前収賄の共謀とは何か
(37)著作権法に共謀罪は適用されるか
(38)与党に配られた共謀罪法案にテロと言う言葉がない
(39)政府検討案原案にテロリズム、テロ組織の用語の定義がない
(40)組織的犯罪集団に「テロリズム集団その他の」を加えると、刑罰法規の意味は変わるのか
※民進党作成資料による
※⑪(29)(39)(40)は共産党、(36)(38)は社民党、それ以外は民進党所属議員の質問。⑮は金田法相ではなく、法務省大臣官房審議官が答弁