国民投票の翌日、街中では「賛成」を呼びかけるエルドアン大統領のポスターが掲げられたままだった=17日午後、トルコ・イスタンブール、杉本康弘撮影
トルコで大統領に権力が集中する憲法改正が実現することについて、市民はどう受け止めているのか。国民投票から一夜明けた17日、首都アンカラと最大都市イスタンブールに暮らす人々に、胸の内を尋ねた。
民主化の先、独裁リスク トルコ大統領に権力集中
首都アンカラ中心部で客待ちしていたタクシー運転手のスレイマン・カラギョズさん(45)は「憲法改正の中身は詳しく知らないが、昨夏のクーデター未遂で指導力を発揮したエルドアン大統領を信頼している。これからのトルコは欧米への経済依存を減らし、もっと独立した強い国になる」と賛成理由を語った。ただし、「政権運営がうまくいかなければ、2年後の大統領選でノーと言えばいいだけだ」と付け加えた。
美容院店主のイスマイル・トパルさん(39)も「公正発展党(AKP)が政権与党となった15年前から経済は上向き、家も車も持てるようになった。外国の指導者にも毅然(きぜん)と接する強いリーダーの下、トルコは世界のリーダー国の一つになる」と興奮した様子で話した。
一方、眼鏡店主のセルチュック・オーズさん(45)は過去の議会選挙でAKPに入れたこともあるが、今回は反対票を投じた。改憲賛成多数を伝える新聞を心配そうに見ながら、「国会や司法による権力チェックが働かず、独裁が強まる」と語った。
イスタンブール在住の男性(28)は昨年9月、相次ぐテロで外国人観光客が減った影響で、観光業の会社を解雇された。「若者の生活は厳しい。イスラム色が強まり、ますます息苦しくなる。もう外国に移住したい」とショックを隠しきれない様子だった。(アンカラ=渡辺丘)