夫妻は「お互いを理解しようとすることは諦めなかった」という=東京都内、伊藤進之介撮影
東京都内に住む夫(54)と妻(52)に、子どもはいない。時折、11年前に流産したわが子のことを思い出す。例えばテレビのCMで、家族に1人、2人と子どもが増える様子を目にした時だ。
子どもはあきらめようか… 不育症、妊娠7回目で出産
夫は「望むべくもない家族像。でも、寂しさを強くは感じないんです」。妻は「胸の中が乾いて空っぽになるような、何とも言えない喪失感に見舞われる」と、思いは違う。それでも、「幸せそうな映像をじっと見つめる私の頭を、彼がポンポンとなでてくれることもある」。妻は自分の気持ちを認めてもらっていると感じ、安心するという。
夫37歳、妻35歳で結婚した。2年後に不妊治療を始め、人工授精から体外受精へ。妻は仕事を辞め、より高度な治療を受けたが、願った結果は得られなかった。
「努力しても報われない治療だ」と思っていたころ、妻の42歳の誕生日に妊娠がわかった。高齢出産になるため手放しでは喜べなかったものの、期待は膨らんだ。夫は夜、小さな命が映った超音波検査の写真を笑顔で見つめ、妻は成長日記をつけた。
妊娠3カ月になってからの診察…