そり遊びの専用スペースでは、親子連れらが歓声をあげていた=新潟県湯沢町、GALA湯沢スキー場
スキー、キャンプ、ボウリング……。かつて大人気だったレジャーに、復活の兆しが見え始めた。当時のブームを担った世代が親になり、子連れで再び楽しむようになったためだ。こうした動きは「リバイバル需要」と呼ばれ、レジャー業界は熱い視線を送っている。
新潟県湯沢町のGALA(ガーラ)湯沢スキー場。2月下旬、滑走コース脇には、そりや雪遊び専用のスペースが広がり、親子連れらが雪まみれになりながら歓声をあげていた。長女(6)と知人親子の計4人で訪れた横浜市都筑区の病院勤務の女性(41)は、「スキーは学生時代に親しんだ。しばらく遠ざかったが、子どもが大きくなってきたので、いっしょに遊ぼうと思って」。
スキー場を運営するJR東日本のグループ会社、ガーラ湯沢の竹添慎哉営業部長は、「近年、子連れのお客さんが目立つ。ブームから減り続けた来場者数は下げ止まった」と話す。
1980年代後半から90年代中ごろにかけて、国内はスキーブームに沸いた。87年に映画「私をスキーに連れてって」がヒット。各地のスキー場はリフトに長い列ができ、混み合った。だがやがて人気は下火になり、客離れが進んだ。
GALAもピークの91年シーズンには来場者が37・6万人いたが、2006年は16・4万人に激減。しかし、12年から30万人台で推移しているという。
80カ所以上のスキー場がある長野県でも、92年に2100万人いた延べ利用者数は10年に640万人に減ったが、12年からは雪不足だった年をのぞいて700万人台を維持。「復活の兆しが見えてきた」(同県観光誘客課)という。
「かつてのブームを担った世代が親になり、10年前後から子どもと一緒にという需要が高まった。そうした層を取り込もうと、積極的に施策を打っている」と苗場スキー場(新潟県湯沢町)の担当者。10年に子ども向けゲレンデをつくり、3歳から入れるスキー教室を新設。12年から小学生以下の子どものリフト券を無料にし、13年には子ども向けの遊び場を拡張した。子どもを預けて親が遊べるよう、託児施設も用意している。
GALAや長野県内のスキー場も、家族で使える更衣室の設置、リフト券の無料化、そりや雪遊びのできる場所の整備など、それぞれ知恵をしぼる。
「こうした取り組みが功を奏して底を打ち、さらに訪日外国人増の効果も出ている」と、日本生産性本部余暇創研の志村武範主幹研究員は指摘する。同本部の調査では、スキーに年1回以上参加した日本人は、93年の1860万人から減少傾向だったが、13年から480万人と横ばい。リフト収入は12年から増えている。「東京五輪もあってスポーツへの関心は高まり、本格的な回復に向かう可能性がある。子どもが親になったとき、再び子連れで訪れる好循環も期待できる」と話す。
■団塊ジュニアら「戻ってきた」
車を使ってキャンプするオートキャンプ。日本オートキャンプ協会によると、アウトドアブームだった96年には参加人口が1580万人いたが、11年に720万人に減った。12年以降は右肩上がりで、15年には800万人台を回復。16年も同様に好調だという。
同協会の担当者は、「かつて団塊世代が家族でキャンプに来た。その子たちが家族連れで戻ってきた」と話す。ツイッターなどで自分のキャンプ道具を他人に見せるなど「楽しみ方の幅が広がっている」という。
60~70年代に一大ブームとなったボウリングも復興の兆し。参加人口は15年、11年ぶりに増加に転じ、日本ボウリング場協会は「回復とまでは言えないが、明るい材料が見えてきた」。ブームを経験したシニア層に、リタイア後の趣味として売り込んだ成果がでてきた、とみる。加えて、小学生の全国大会を始めるなど、将来の担い手づくりにも取り組む。
宿・ホテル予約サイト「じゃらん」を展開するリクルートライフスタイルは、将来のリバイバル需要を狙って施策を打つ。例えば19歳はスキー場のリフト券を無料にする「雪マジ!19」。同世代を対象にした類似のキャンペーンをJリーグ観戦、温泉、ゴルフ、釣りにも広げた。
「高校卒業後の19歳は時間の使い方で裁量の余地が広がる。鉄は熱いうちに打つ、将来への種まきのようなもの」(広報)という。(石山英明)