家族が見守る中、整列をするPKO派遣部隊隊員たち=19日午後0時8分、青森市の陸上自衛隊青森駐屯地、仙波理撮影
南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されていた陸上自衛隊施設部隊の撤収が始まった。「治安は安定していた」。19日に帰国した第1陣の隊員はそう語った。だが、LINE(ライン)などで現地の情勢を伝え聞いていた家族には、危険性を不安視する声も。隊員や家族の心のケアをめざす動きも出ている。
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午前11時半。任務を終えた石井究(きわむ)3等陸佐(34)ら隊員が青森空港(青森市)の到着ロビーに姿を見せた。出迎えた幹部たちが、「お疲れさま」「お帰りなさい」と握手をすると、日焼けした迷彩服姿の隊員たちも「ありがとうございます」と笑顔をのぞかせた。
バスに乗り込む隊員の中に、おいの姿を見つけた40代の女性は、駆け寄ってハイタッチ。「無事に帰ってきてくれて、本当によかった」と喜んでいた。
5月末までに順次、帰国するのは第11次隊として派遣された約350人。今回は青森や八戸(青森県)、岩手、船岡(宮城県)などの駐屯地に所属する68人が帰国した。青森駐屯地で帰国報告を受けた陸自第9師団長の納冨中(のうどみみつる)陸将は、「自衛官としての誇りを胸に、建国まもない南スーダンの発展に十分貢献してくれた」とねぎらった。
石井3等陸佐は、首都ジュバの治安について「安定していた。安全確保に万全を期し、緊張感を持って活動してきた」と説明。武装集団に襲われた国連職員らを武器を使って助ける「駆けつけ警護」など、新たな任務についても「派遣前に訓練をしていたので、不安なく行けた」と強調した。
3月には、隊員5人が一時、南スーダン政府軍の兵士に誤って連行される事態があったが、「けが人はなく、大きな動揺はなかった」。防衛省が「廃棄した」としていた日報が保存されていた問題を尋ねられると、「お答えできる立場にない」と述べた。(桑原紀彦、安西裕莉子)