人工知能(AI)を使って心筋梗塞(こうそく)や脳卒中などの患者の電子カルテの情報を分析、発症や再発するリスクをより正確に予測する研究を始めたと、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)が24日、発表した。
医師がカルテに自由に書き込む患者の具体的な症状は、同じ症状でも「胸痛」「胸が痛い」などと異なる表現があり、自動的に集計するのは難しかった。今回日本IBMの協力を得て、言葉の意味や文脈を理解し、データの関連性などを分析できるAI「ワトソン」を活用。患者約1500人分の電子カルテを読み込ませ、自由記述を正確に識別できるようにした。
試しにワトソンで識別した「胸の痛み」や「呼吸の苦しさ」といった具体的な症状の情報を、既存のリスク評価基準と組み合わせて人間が分析したところ、心筋梗塞や脳卒中が起こる確率の予測精度を10~15%上げることができた。
半年後をめどに同じ規模のデータを読み込ませ、識別の正確さを更に検証する。将来的にはAIで自動的により高い精度でのリスク予測を目指す。同センターの安田聡副院長は、「予後の早期の診断や治療に役立てたい」と話している。
ワトソンを活用した重症化リスク予測は藤田保健衛生大(愛知県)などが糖尿病患者で取り組んでいる。(石塚翔子)