東芝が、米原発子会社ウェスチングハウス(WH)の米連邦破産法11条の適用申請を急ぐのは、WHに今後の追加損失リスクがなお残っており、早めにリスクを遮断した方が得策との判断に傾いたためだ。債権者らとの事前調整を早急に進めるが、今月中の申請に向けて「時間との闘い」(東芝幹部)になっている。
東芝、今月中のWH破産法申請で最終調整
「損失は増えてもクリアになる。年度内に申請できるかどうかの違いは大きい」。東芝幹部は、月内申請の意義をこう説明する。
東芝は、リスクの高い海外原発事業から撤退するため、WH株式を売却して保有割合を現在の87%から50%未満に引き下げ、連結対象から外す方針。破産法の適用申請で損失拡大のリスクを排除できれば、WHの引き受け手も早く見つけられるとの期待もある。
米連邦破産法11条の申請では、破綻(はたん)企業の借金をどう整理するか、どの事業を継続するかといった点をまとめた再建計画について、大口の債権者との調整を済ませたうえで申請する「事前調整型」をとることが多い。破綻後の資金繰りなどを支える支援企業を事前に決める場合もある。WHは、金融機関や原発の発注元である電力会社などと、費用負担や契約の見直しなどを巡る調整を急いでいる模様だ。
原発事業は地元の雇用や電力供給にとどまらず、国の安全保障政策とも関わるため、米国政府との調整も必要になるとみられる。
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〈米連邦破産法11条〉 倒産の手続きを定めた米国の法律で、日本の民事再生法に当たる。原則として旧経営陣が事業を続けながら、負債の削減などを進める「再建型」の規定で、申請後に会社が再建計画を提出し、一定以上の債権者の賛成を得たうえで、裁判所が認可すれば計画が実行される。最近では、2009年にゼネラル・モーターズ(GM)が、11年にアメリカン航空が適用を申請し、その後再建を果たした。