福島県北塩原村の小野川湖。投稿者は「小野川湖は今年も綺麗(きれい)かしら?」とメッセージをつけた
「東北でよかった」――。東日本大震災をめぐり、復興相だった今村雅弘衆院議員が発言し、辞任のきっかけとなったこの言葉。ネットでは、意味をあえて逆にとらえ、東北の美しい風景や郷土の味を発信する投稿が相次いでいる。
今村氏の問題発言があった25日夜以降、ツイッターには「#東北でよかった」のハッシュタグ(検索語)付きのつぶやきが続々と投稿されている。
「私の住む町はこんなに素敵(すてき)」「故郷を離れても忘れない。あの町で育ってよかった」「福島のばあちゃんが作った梅酒はどこの梅酒より美味(おい)しい」。こうしたメッセージとともに、東北各地の桜の名所や田園風景、仙台の七夕まつりや青森のねぶた祭りの様子、盛岡冷麺やラーメン、馬刺しといった郷土の料理の写真が数多く投稿されている。
国の天然記念物で、日本三大桜の一つ、福島県三春町の滝桜の写真を投稿した五味馨(けい)さん(36)は「引っ越してきたのが#東北でよかった」とつぶやいた。国立環境研究所の研究者として、同町内の施設で福島県の復興に向けた環境作りの研究に取り組む。「政治家の発言に思うところはあるけれど、それ以上に東北の日常にあふれる美しさを発信したかった」と話す。
仙台市に住む男性は、4月中旬に訪れた福島県二本松市の「中島の地蔵桜」の写真を26日朝に投稿。リツイートは夜までに2700を超えた。「ただのおっさんサラリーマンのツイート、こんなことは初めて」と反響の大きさに驚く。
問題発言を逆手にとったハッシュタグ。ツイッターでは「すてきな使い方になっていて涙が出た」などと共感が広がっている。(宮嶋加菜子)