国連安保理の会合で発言するティラーソン米国務長官=28日、ニューヨーク、鵜飼啓撮影
核・ミサイル開発を進める北朝鮮をめぐり、国連安全保障理事会は28日午前(日本時間同日夜)、ニューヨークで閣僚級会合を開いた。米国や日本は制裁強化に向け、中国の協力を取り付けて「北朝鮮包囲網」を作りたい考えだ。「力による平和」を掲げるトランプ政権は、外交交渉に舞台を移す。
会合は安保理議長国の米国のティラーソン国務長官が呼びかけた。岸田文雄外相や、北朝鮮に影響力を持つ中国の王毅(ワンイー)外相らが参加。日米韓外相会談が開かれたほか、米中、日中の外相会談も予定される。
ティラーソン氏はまず、「ソウルや東京への北朝鮮による核攻撃の脅威は現実的なものだ」と強調。北朝鮮が米本土を攻撃する能力を持つのも「時間の問題」と危機感をあらわにした。その上で、加盟国に対して制裁の完全な履行を求め、「北朝鮮を経済的に孤立させるべきだ」と訴えた。
また、ティラーソン氏は「北朝鮮の外交官が特権を利用して資金を獲得している」と指摘し、国連加盟国に北朝鮮との国交の停止や制限を要求。特に北朝鮮の貿易の9割は中国が相手だとして経済的な影響力を行使するよう求めた。ただ、北朝鮮の「体制転換を求めているわけではない」とも述べ、現体制と対話を進める用意があることを強調した。
一方、王氏は会合前に記者会見し、北朝鮮には核・ミサイル開発の停止を、米韓には大規模な軍事演習の停止を要求。その上で「大切なのは協議の再開だ。二国間や多国間の対話を通じて、6者協議を再開すべきだ」と強調した。
米国は26日、経済制裁の強化や外交手段を通じて北朝鮮に圧力をかけ、朝鮮半島の非核化を目指す方針を示した。国連安保理では、追加の経済制裁やこれまでの制裁の履行強化を目指している。カギを握るのは、北朝鮮の最大の支援国である中国の対応だ。
中国は現在、米側の求めに応じて協力する姿勢を見せる。中国は国連安保理決議に沿い、北朝鮮からの石炭輸入の年内停止を行っている。4月の米中首脳会談後、中国に向かった北朝鮮の石炭貨物船が入港を拒否され引き返したとされる。
また、ティラーソン氏は27日放送のFOXテレビのインタビューで、中国が北朝鮮に「再び核実験を行えば独自制裁を科すと通告した」ことを明らかにした。中国政府が米側に伝えたという。中国が、国連安保理の枠を超えて、北朝鮮への独自制裁の可能性を言及するのは極めて異例だ。
一方、トランプ大統領は27日のロイター通信とのインタビューで、北朝鮮問題について「米国は外交的に解決したいが、非常に困難だ」と発言。「最終的に北朝鮮との大規模な紛争になる可能性がある」と語った。軍事行動の可能性を示して北朝鮮を牽制(けんせい)するとともに、中国に北朝鮮への圧力を強めるよう促す狙いがあるとみられる。トランプ氏は中国の習近平(シーチンピン)国家主席について「一生懸命努力していると信じている。彼は混乱や破滅を見たくないはずだ」とも強調した。(ニューヨーク=峯村健司、金成隆一)