トルコ政府は4月29日、インターネット上の百科事典「ウィキペディア」の国内からの接続を遮断した。4月16日の国民投票で大統領の権限を大幅に強化する憲法改正が決まった直後から、矢継ぎ早に強権的な措置が打ち出されている。
「大統領信頼」「独裁強まる」 トルコ改憲、期待と不安
政府は遮断の理由について、「トルコがテロ組織を支援している、との誤った主張内容の削除要請に応じなかったため」としている。ウィキペディアの創設者、ジミー・ウェールズ氏はツイッターで「情報へのアクセスは基本的な人権であり、私はトルコの人々とともに権利のために戦う」とのコメントを投稿した。
また4月29日に発表された政令では、お茶の間で人気のあるテレビのデート番組が禁止とされた。政令は「ラジオやテレビで、人々が紹介されるような番組を許可するわけにはいかない」としている。この番組をめぐっては、政府幹部から「トルコの伝統や慣習と合わない」との発言が出ていた。
政府は同日、官僚や軍人、警察官など約4千人の公務員の解雇も発表した。昨年7月のクーデター未遂事件の後に出された非常事態宣言の下で、政府が「首謀者」とみる在米のイスラム教指導者ギュレン師の信奉者団体との関係が疑われる者を大量に拘束したり、政府に批判的なメディアを閉鎖したりする事態が続いている。
4月16日に行われた国民投票では、行政権を大統領に集中させることを柱とする改憲の是非が問われた。エルドアン大統領と親イスラムの与党・公正発展党が中心となって賛成派の運動を推進し、賛成票が反対票をわずかに上回った。(イスタンブール=其山史晃)