佐藤天彦(あまひこ)名人(29)に稲葉陽(あきら)八段(28)が挑戦する第75期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)の第3局が1日、長崎県西海市のオリーブベイホテルで始まり、午後6時31分、稲葉挑戦者が32手目を封じ手にして1日目を終えた。本格的な戦闘開始を見据え、中央でにらみ合いが続いている。
タイムラインで1日目を振り返る
持ち時間各9時間のうち、消費は佐藤名人が3時間24分、稲葉挑戦者が4時間46分。2日午前9時に再開し、夜までに決着する見込み。
ここまで1勝1敗のタイ。佐藤名人は3手目▲2五歩で、稲葉挑戦者が得意とする横歩取りを避けた。
佐藤名人の▲3六歩は、銀の進出を狙う急戦策の意思を示した手。相手の8筋の歩交換を甘受するこの指し方は、従来、損だと考えられてきたが、将棋ソフトの登場で棋士たちの価値観が変わり、見直されつつある。前例がまだ少なく、最先端をいく将棋になった。
解説を務める副立会人の豊川孝弘七段は「佐藤名人の積極策に稲葉挑戦者が自然に対応しています。先手の4六の銀がさばけるかどうかがポイントです」と話した。(村瀬信也)
〈指し手〉先手・佐藤名人 ▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角▲7六歩△2二銀▲4八銀△3二金▲3六歩△8四歩▲7八金△8五歩▲3七銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8五飛▲4六銀△6二銀▲6九玉△7四歩▲5六歩△8八角成▲同銀△3三銀▲7七銀△6四歩▲6六銀△6三銀▲5五歩