中国中部を東西に貫く山脈・秦嶺山脈の写真が最近、話題になっている。人民網が報じた。
この写真はあるネットユーザーが今年撮影したもの。他のネットユーザーたちは、「秦嶺山脈はそのパワーで、寒気が南下しないよう抑え込んでいる」、「これは地理のベスト教材」といったコメントをつけて、この写真を転送している。また、飛行機から自分が撮影した写真をアップしているネットユーザーもいる。
しかし、秦嶺山脈の真相なるものはそれほど単純ではない。ここではそんな秦嶺山脈の様々な役割について勉強していこう。
中国の果てしなく広い領土に、極めて雄大な姿をどっしりと横たえ、高くそびえ立つ山脈、それが秦嶺山脈。気候の調節だけでなく水や土の保持、水源の涵養、生物の多様性維持などさまざまな機能を果たしている。中国気象局が以前、公式アカウントに掲載した記事によると、秦嶺山脈の存在が、中国の南方エリアと北方エリアに非常に大きな違いを生じさせた。その違いとは、甘い粽が好まれるか、塩辛い粽が好まれるかといった小さなものから、穏やかな気質の南方エリアの人、度量が大きく豪快な北方エリアの人といったような大きなものまで、秦嶺山脈の存在と密接な関係があるという。
また秦嶺山脈は、水蒸気を遮断する役割も果たしている。秦嶺山脈の南斜面の平均降水量は800ミリ以上で、北斜面は800ミリ以下。北斜面は気温が低くて乾燥しているのに対して、南斜面の気候は穏やかで湿度が高い。南斜面には、亜熱帯気候、温帯気候、暖帯気候、冷温帯気候、亜寒帯気候の5種類の気候帯がある。一方の北斜面には温帯気候、暖帯気候、冷温帯気候、亜寒帯気候の4種類の気候帯がある。秦嶺山脈があることで中国大陸の自然の構造に影響を及ぼしているだけでなく、南方エリアと北方エリアに非常に大きな違いも生じさせている。
では、秦嶺山脈はどのように寒気の南下を阻んでいるのだろうか。まず、秦嶺山脈は標高が高いため寒気の南下と、温かい空気の北上を阻む役割をある程度果たしている。しかし、寒気は西から東、北から南へと、山々を越えながら長距離移動すると、スタミナを消耗し、秦嶺山脈まで来て、寒気がその斜面を登るとさらにスタミナを消耗する。そのため、それほど強くない寒気の場合、秦嶺山脈まで来ると「スタミナ切れ」となり、強めの寒気でも山々を越えるうちにスタミナを消耗してしまう。そのため、秦嶺山脈があるおかげで寒気は南下してその実力を発揮することはできないのだ。しかし、全ての寒気が秦嶺山脈に阻まれるわけではなく、非常に強い寒気はそこをくぐり抜けて、中国南方エリアに影響を与えることがある。
しかし、通常は、山脈が乾燥した空気や寒気を阻んだとしても、話題になっている写真のようなくっきりとした違いができることはなく、逆に、温かく湿った空気を阻んだ時に、一方では温かい空気が上に持ち上げられて雲になり、もう一方では気流が下に向かって、青空が広がる。またこの写真に関しては、雲がある側が南側だという。 (編集KN)
「人民網日本語版」2020年11月5日