東京・銀座でスイカのかぶり物をかぶってスイカをPRする加藤国洋・山形県尾花沢市長(2016年7月、同市提供)
当選が決まった候補者が「バンザ~イ!」。あれ、何か頭にかぶっていますよ。4月の名古屋市長選で当選した河村たかし市長は「名古屋城」のかぶり物をしていました。他にも、かぶり物をする知事や市長はいるようです。かぶり物にかける「思い」とは。
河村氏といえば、当選後にバケツの水をかぶるパフォーマンスが有名。4月の市長選で当選を決めた際も水を何度も浴びたが、それ以上に目立っていたのが頭の「お城」。ずぶぬれになっても頭の「お城」は崩れなかった。
それもそのはず、かぶり物は薄いプラスチック製。河村氏の事務所スタッフの手作りだ。
お城は名古屋城天守。河村氏は「名古屋の経済に絶対不可欠な起爆剤」と、木造にすることを訴えてきた。4月の市長選も、対立候補が慎重だったため、木造化が一大争点になった。
スタッフの男性によると、かぶり物は投開票日の数日前に河村氏自身が提案。名古屋城の写真を貼りつけ、天守の形になるように余白をカッターで切り取った。上部に名古屋城のシンボル「金のしゃちほこ」の写真、下部には「名古屋城 祝 木造復元!!」と書いた紙の帯を貼りつけた。スタッフが河村氏から何度もイメージを聞き、数時間で作り上げたという。
「本当に手作りのオリジナル。市民の喜びを表現するものだ」。河村氏もできばえに満足げだ。
河村氏は「選挙という神聖なもので信任を得た、名古屋の郷土愛のシンボルがスタートすることを祝う意味だ」とかぶり物の狙いを語る。分かりやすい「お城」アイコンで看板政策のアピールを狙ったようだ。
「かぶり物首長」は、他にもいる。
山形県の吉村美栄子知事は2014年4月、県職員への訓示の場で突然サクランボのかぶり物をかぶり、全国的に話題となった。滋賀県の三日月大造知事も14年12月に近江米のPRイベントで、コメの形のかぶり物をつけた。両県によると、それぞれ県産品を広く宣伝する狙いがあったという。
ただ、山形県によると14年4月、当時の副知事が他県での防災会議でサクランボのかぶり物をかぶり、一部で「時と場合を考えてほしい」などの指摘を受けた。吉村知事がサクランボをかぶる回数は減り、最近では昨年6月が最後という。
一方、山形県尾花沢市の加藤国洋市長は吉村知事をまね、毎年7月に東京・銀座などで開く特産品PRイベントで14年からスイカのかぶり物をつけ続けている。市の担当者は「夏にかぶり物をするのはとても暑く大変なことですが、特産の『尾花沢すいか』を広くPRしたいという強い思いでかぶり物をしています」と説明する。(関謙次)