米メキシコ国境 3140キロメートル
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高さ3メートルほどの赤茶けた鉄柵は幹線道路と並行して畑を横切り、ときに民家の前に立ちはだかる。だが、あちこちで柵は途切れ、車が走り抜けている。検問があるわけでもない。
「メキシコとの国境に壁を建てる」。トランプ米大統領はこう豪語して当選した。就任後の3月半ば、国境から遠く離れたテネシー州ナッシュビルの集会でも、支持者らが会場の外で「壁を建てろ」と繰り返していた。
特集:分断世界
「国境沿いの町は不法移民が押し寄せて破産状態だ」。トランプ支持者のミシェル・ドノバンさん(46)はそう力説した。
米テキサス州ブラウンズビルのメキシコ国境近くに建設された柵。反対側もまだ米国だ=中井大助撮影
それならば、と国境の町、テキサス州のブラウンズビルを訪ねた。「壁」は確かに立っていたが、そこには予想を裏切る風景が広がっていた。
米テキサス州ブラウンズビルのメキシコ国境付近に住む人が建てた看板。「我々はアメリカの一部 必要なのは代表と保護であり、柵ではない」と訴える=中井大助撮影
柵の向こう側に、「我々は米国の一部」という看板が立つ。壁は国境線上ではなく、米国領土のはるか内側に建てられているのだ。
奇妙な壁が建てられた理由は、その地形にある。同州とメキシコが接する国境の大半は、むかれたリンゴの皮のように蛇行するリオグランデ川に沿っており、直線の壁は作れない。両国間の条約で河川敷にも建造できない。
米テキサス州ブラウンズビルのメキシコ国境付近に建てられた柵。道路などを通すため、突然なくなっている部分も多い=中井大助撮影
このため、地域によっては国境から1キロ以上離れた場所に柵が立っている。住民は自由に行き来をする。この壁にいったい、何の意味があるのか。
約3200キロ続く国境のうち…