お寺のお堂での寺院コンサート。受講生の演奏と一緒に、子供たちも拍手を浴びた=長崎県小値賀町
日本の西の端、東シナ海に浮かぶ離島に、16年目を迎えた小さな音楽祭がある。長崎県小値賀町の「おぢか国際音楽祭」だ。教会やお寺、民家も会場にした隠れ家的な音楽の祭典。豊かな自然とおもてなしではどこにも負けていない、と島民は胸を張る。
赤や緑、青のステンドグラスに差し込む朝の光が混じり合い、教会堂の空気は複雑な色合いを増す。目の前でチェロ奏者の長谷川陽子さんが紡ぐバッハの無伴奏チェロ組曲。音と光のハーモニーに、聴く人はそっと目を閉じた――。
ここは小値賀島の東2キロ、チャーター船で10~15分ほどの野崎島。かつて潜伏キリシタンが暮らした集落は廃れ、いまや鹿とイノシシの楽園だ。
この無人の島の中腹に、旧野首教会はぽつんとたたずむ。多くの教会を手がけた建築家・鉄川与助によるれんが建築で、長い迫害から解放された信者らが身を削って建てた。
3月30日の朝、ここは音楽祭恒例の教会コンサートの舞台になった。堂内は60人余りのお客さんでいっぱい。たった1時間の小さな演奏会だったが、ピアノが持ち込まれ、バイオリンやチェロ、ピアノでバッハの名品が次々と奏でられた。
雲間から太陽がのぞいたのだろうか。「G線上のアリア」の旋律に乗ってステンドグラスを通る光が、天井の白いしっくいをバラ色に染めた。
「なんて柔らかい響きでしょう…