微小な結晶で薬を包む技術(イメージ図)
骨の再生を促す薬などを微小なたんぱく質の結晶体に包み込む技術を、京都工芸繊維大の森肇教授(ウイルス学)が開発した。体内で分解されやすい薬を結晶体で保護することで治療効果が長続きすると期待される。英バイオ企業が実用化して今春、販売を始めた。
カイコに寄生するウイルスは自らを保護するためサイコロ状の結晶体(一辺約5マイクロメートル)を作る。森さんはこの仕組みを利用し、ガの一種の昆虫の細胞を使い、ウイルスの代わりに薬が入った結晶体を作る技術を開発した。薬も細胞が作る。実際、骨の再生を促す薬が入った結晶体をラットに埋め込んで効果を確認した。
薬となるたんぱく質は熱や乾燥、紫外線に弱い。この結晶体に収めれば1カ月以上にわたって体内で薬がしみ出し、効果が続くという。結晶体には様々な薬を入れることができ、英バイオ企業が約20種類の結晶体の製造、販売を始めた。
また、歩行困難などの症状が出る脊柱(せきちゅう)管狭窄(きょうさく)症の患者について、別の医療関連企業と協力して欧米で年内の治験開始をめざすという。森さんは「たんぱく質を保護する特徴を活用すれば保管に冷蔵や冷凍設備が不要なワクチンも作れる可能性がある」としている。(西川迅)