水槽のムラサキウニにキャベツをちぎって与える臼井一茂主任研究員(左)ら=神奈川県三浦市三崎町城ケ島の県水産技術センター、前田基行撮影
海藻を食い荒らし、駆除の対象となっているムラサキウニに、本来は廃棄されるはずのキャベツや大根を食べさせたところ、甘みのある良質のウニに生まれ変わった――。神奈川県水産技術センター(三浦市)がそんな実験に成功した。
センターによると、ムラサキウニが増えて岩場の海藻を食い尽くすなどの被害が各地で問題となっている。ただ、ムラサキウニの殻を割っても食用となる「生殖巣」はほとんど入っていない。
センターは、三浦市の特産だが傷んで商品価値がなくなった野菜をウニのえさとして利用できないか、昨年から実験を開始。キャベツ、大根、ブロッコリーはよく食べ、特にキャベツは1個まるごとを80匹のウニが3日間で完食する食べっぷりだった。
ウニの身は成熟すると、全体重の20%ほどの重さになるが、実験前は2~3%だった身が、最大で17%に育った。うまみ成分も市販のウニと同等との分析結果が出たという。
今年からは地元の県立海洋科学高校や京急油壺マリンパークと連携し、商品化に向けた実証実験を始めた。センターの臼井一茂主任研究員は「今まで廃棄していたウニと野菜、この二つを組み合わせることで価値のあるものを生み出す。そんな新たなビジネスモデルが作れれば」と話している。(前田基行)