近畿日本ツーリストが鬼怒川で実施したツアー。温泉街が若い女性であふれた(栃木県日光市、同社提供)
話題のアニメにちなんだ地域への旅行ツアーを、大手旅行会社が次々と売り出している。アニメの舞台やゆかりの地を訪ねる「聖地巡礼」ブームに注目。旅行会社ならではの企画力で独自の「聖地」も提案し、個人旅行とはひと味違う魅力を打ち出そうとしている。
近畿日本ツーリスト(KNT)は4月下旬から、高校生のアイドルグループが、学校などで起こる様々なトラブルを乗り越えながら成功を目指すアニメ「MARGINAL#4 KISSから創造(つく)るBig Bang」のツアーを募集中だ。行き先は、山梨県の「河口湖オルゴールの森美術館」。アニメの舞台ではないが、洋風のおしゃれな雰囲気が「音楽という共通点があり、ヨーロッパ風の庭園などが中性的でイケメンな登場人物たちのイメージとも合う」とアニメ制作者側も了承した。館内ではアニメで使われる曲のオルゴールをつくれる。登場人物の独自のセリフを聞ける催しが目玉で、「デート気分が味わえる」(広報)。
ツアーは6月末まで随時実施。東京から1泊2日(朝食付き)の場合、1人の参加だと約4万4千円から。これまでの申込件数は目標を上回っているという。
昨年は、イケメン高校生が怪人たちから地球を守りつつ、学園生活を楽しむアニメ「美男高校地球防衛部LOVE!LOVE!」の舞台とファンの間で言われている群馬・伊香保温泉へのツアーも実施した。今年3月から続編として、主要な登場人物の「鬼怒川熱史」にちなみ、栃木・鬼怒川温泉へのツアーを実施。現地に登場人物5人の等身大パネルも置き、記念写真目当ての若い女性に人気だという。
JTBも昨年、高校生の自転車競技を描いたマンガ「弱虫ペダル」の映画版の舞台になった熊本を訪れるツアーを実施した。今後も「複数の企画を検討中」(広報)だという。
「聖地巡礼」の本格化は10年ほど前。旅行会社もアニメの舞台やイベント会場を回るツアーを企画したが、集客に苦しんだ。インターネットでの宿泊予約が普及し、個人旅行が定着していたからだ。
昨年のアニメ映画「君の名は。」のヒットで、「聖地巡礼」ブームは再燃している。奈良県立大の岡本健准教授(観光社会学)は「旅行会社は、アニメファンは一部だけとみていたが、市場の広がりに気づき、本格的に付加価値をつけたツアーをようやく組み始めた」とみる。(森田岳穂)