北朝鮮の相次ぐミサイル発射をめぐり、菅義偉官房長官は22日、「北朝鮮の外貨収入を減少させるとともに、核・ミサイル関連の貨物や技術移転を防止することが重要だ」と述べた。政府は、北朝鮮への石油輸出禁止を中国に求めるほか、独自の制裁として核・ミサイル開発に関連する団体や個人の資産凍結対象を広げる制裁強化策を検討しているが、実効性は未知数だ。
北朝鮮は21日、今年8回目となる弾道ミサイルを発射。最大の特徴はミサイル発射の時間帯だ。北朝鮮は通常、早朝を中心にミサイルを発射するが、今回は夕方。防衛省によると、北朝鮮は昨年15回ミサイルを発射したが、夕方は2回のみだ。今年に入って夕方は初めてとなる。
政府関係者は北朝鮮の意図について、「『圧力を掛けられても平気であり、いつでもどこでも撃てる』という意思表示では」と分析。別の政府関係者は「ミサイル技術が外貨稼ぎの手段となる」と懸念を示す。
制裁強化のカギを握るのは、北朝鮮の貿易の9割を占める中国だ。
「石油を止めることを含め、(北朝鮮への)鉱物資源(の輸出)を絞ることでかなりの圧力を感じさせることができる」。自民党が22日開いた北朝鮮核実験・ミサイル問題対策本部で、外務省幹部はこう説明した。
日本の対北朝鮮制裁は「ほぼやり尽くしている」(政府関係者)という状況のなか、さらなる圧力強化には中国の理解が欠かせない。日本はすでに北朝鮮の核・ミサイル開発に関連する団体・個人の資産凍結を行っている。昨年12月に中国の団体・個人も一部対象に加えたが、新たな制裁強化策としてこの対象を拡大していく方針だ。菅氏は会見で、「中国と連携し、挑発行動を自制するよう取り組む」と述べた。(松井望美)