北朝鮮のミサイル発射を受けたNSCを終え、首相官邸を後にする稲田朋美防衛相=21日午後6時37分、飯塚晋一撮影
北朝鮮が、14日に続いて2週連続で弾道ミサイルを発射した。韓国の専門家は、米国や韓国との対話を意識して交渉条件をつり上げる狙いだと分析。同時に、弾道ミサイルの脅威は確実に高まっており、安倍晋三首相は主要国首脳会議(G7サミット)で主な議題とする考えを示した。
北朝鮮が弾道ミサイル発射 中距離の新型か
特集:北朝鮮のミサイル
北朝鮮が14日に続き、21日も弾道ミサイルを発射した。軍事関係筋によれば、21日の発射地点では別の移動発射台も確認されており、更に弾道ミサイルを発射する可能性がある。6月には米空母2隻の日本海派遣や米韓首脳会談も控えており、北朝鮮の動きが慌ただしくなってきた。
陸上発射型弾道ミサイルの場合、北朝鮮は明け方に多く発射してきた。敵の防衛力の弱い時間帯を狙うと同時に、ミサイルの観測も行う狙いがあったとみられる。3月末からは、ほぼ2週間間隔で発射を続けていたが、21日の発射は、こうした「セオリー」を無視した格好になった。
韓国の千英宇(チョンヨンウ)・元大統領府外交安保首席秘書官は「米朝協議に臨む前に、新型弾道ミサイルの能力を確実にしておきたいのだろう」と語る。別の韓国政府元高官は、南北対話も念頭に置いた行動との見方を示した。
先週訪米した文在寅(ムンジェイン)韓国大統領の特使団によれば、ティラーソン米国務長官は、北朝鮮の体制変換や崩壊を求めない考えを表明。北朝鮮が核廃棄の考えを示し、核実験と弾道ミサイル発射を中止すれば対話に臨むとして、「北朝鮮は米国を一度信じるべきだ」と語ったという。
ただ、6月ごろには日本海に米原子力空母2隻が同時に派遣される見通し。北朝鮮の労働新聞(電子版)は20日付で「無謀な軍事的挑発だ」と非難した。緊張が更に高まり、不測の事態が起きる可能性を懸念する声も出ている。(ソウル=牧野愛博)