解雇のトラブルをお金で解決する「解雇の金銭解決制度」を巡り、厚生労働省は22日、解雇された労働者が職場復帰を求めなくても、解決金の支払いを要求できる権利を与える新たな制度の導入について本格的に議論する方針を明らかにした。厚労省の労働政策審議会で、今夏にも法改正に向けた議論が始まる見通しになった。
厚労省は「金銭解決制度」の有識者検討会に提出した報告書案で、労政審で議論するよう提言した。解決金額に上限と下限を設定することも検討事項にすると明記した。
検討会のこの日の会合で、労働側は「会社が解決金に近い金額を示して労働者に退職を迫るリストラの手段に使われる」と制度の導入に猛反発。経営側にも「企業によって支払い能力に違いがあり、一律に定めるのは難しい」などとして、解決金に限度額を設定することに慎重な意見がある。
労働側は、労政審で本格的な議論を始める必要はないと主張。議論は紛糾したが、厚労省は異論を押し切って労政審で議論を始める構えだ。検討会は月内に報告書をまとめる予定で、報告書には「検討会の委員のコンセンサス(合意)が必ずしも得られたわけではない」と明記する見通し。
金銭解決制度は2002~03年と05年の過去2回、導入が検討されたが、実現しなかった。政府は15年6月に閣議決定した日本再興戦略に金銭解決制度の議論を再び始める方針を盛り込み、厚労省が有識者検討会を設置して議論してきた。
労働法制の改正には、原則として労使の代表者が参加する労政審での議論を経る必要がある。労働側の反発は根強く、議論は曲折が予想される。(千葉卓朗)