川上未映子さん=篠田英美撮影
『騎士団長殺し』を2月に出した村上春樹さんの、川上未映子さんによるインタビューを収めた『みみずくは黄昏(たそがれ)に飛びたつ』(新潮社)が刊行された。作家が作家に創作について聞くとき、そこには何が起こるのか。川上さんに聞いた。
インタビューは計4回。最初は村上さんの『職業としての小説家』が刊行された2015年のもので、残りは今年に入ってから。やりとりは計10時間以上に及んだという。
川上さんはたとえば、『騎士団長殺し』に登場する井戸のような穴について聞いた。『世界の終(おわ)りとハードボイルド・ワンダーランド』や『ねじまき鳥クロニクル』、村上作品では地下の暗い空間が、繰り返し重要な役割を担ってきた。今回もそれを繰り返した意味は? 村上作品の愛読者なら、誰だって気になる。
川上「今回も、『穴』が出てきましたよね」
村上「そういえばそうだ。また穴の話ですね。(中略)昔書いたことってほとんど忘れちゃってるから」
物語に埋めこまれた意味について指摘された村上さんが「なるほど、そういえばそうだ」と感心し、川上さんが「本当に何も考えてなかったんですか」とくいさがるパターンが、何度も繰り返される。
「そういう仕掛けみたいなのがあったら、みんな即ばれちゃいます」とも村上さんは語る。書くときは物語を追いかけるのに懸命で、意味を考える余裕などないのだと。
「計り知れないというか、自由さに驚きました。でもこれまでの膨大な読書が、その自由さを支えてるんだと思う」と川上さん。
読みどころの一つは、女性の登場人物が「性的な役割を担わされ過ぎていないか」と問うくだり。ちょっと聞きにくいけど、でも聞きたいんだという強い気持ちが、言葉の端々からびりびり伝わってくる。
「ときどき指摘されることなの…