中東・アフリカ6カ国の国民の米国入国を一時禁止するトランプ米大統領の大統領令について、バージニア州の連邦控訴裁判所(日本の高等裁判所に相当)は25日、全米での執行停止を命じた連邦地裁の決定を支持した。トランプ政権の肝いり政策「入国禁止令」に米国の司法が再びブレーキをかけた。政権は連邦最高裁まで争う方針。
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裁判官13人のうち10人の多数意見。グレゴリー裁判長は「大統領令が回復不能な損害を個人に与える場合、その権限の行使が点検を受けないわけにはいかない」と述べ、大統領の権限の限界を指摘。さらに「国家安全保障というあいまいな言葉を使っているが、文脈の上では宗教的な不寛容や憎悪、差別になっている」と厳しく批判した。
トランプ氏の入国禁止令をめぐっては、就任直後の1月に中東・アフリカのイスラム圏7カ国の国民の入国を一時禁止にしたが、地裁が執行停止を決定。これを受け、トランプ氏は3月、対象国を6カ国(シリア、イラン、ソマリア、リビア、スーダン、イエメン)に減らした新しい大統領令を出したが、メリーランド州などの連邦地裁が再び執行停止を命令し政権が不服を申し立てていた。
セッションズ司法長官は同日、「法律上の権限の範囲内のものだ」と大統領令の合法性を主張し、「連邦最高裁判所の再審理を求める」と最高裁まで争う方針を示した。(金成隆一)