トチン。左は中が空洞になっている「中空トチン」=佐賀県伊万里市
文化財に指定されている江戸時代などの窯跡から、陶磁器のかけらを掘り起こして持ち去る。有田や伊万里といった焼き物の里がある佐賀県で、そんな被害が後を絶たない。かけらはネットなどで高値で販売されているとみられる。窃盗罪や文化財保護条例違反に問われる行為で、自治体が対策を強化している。
武雄市の史跡になっている窯跡。捜査関係者によると、2014年6月24日午後6時ごろ、男たちが陶片を袋に詰めているのに住民が気づいた。警察官が駆けつけると、現場にはツルハシがあり、近くにいた男が陶片を袋に入れたことを認めた。「持ち帰るつもりだった」と話したという。
土囊(どのう)用の6袋、麻の2袋に陶片が入っており、車には別の2袋もあった。重さは計約85キロ。男たちは福岡市の60代の父と30代の息子2人(いずれも当時)。違法だとわかっていたが、軽い気持ちでやったという。県警は15年5月、窃盗未遂容疑で3人を書類送検した。窯跡の盗掘の立件は珍しいという。
陶片は収集家がいて、インターネットのオークションサイトには「発掘品」とうたうものも、数千~数万円で売られている。
武雄市教委の担当者は、市内の窯跡名をうたう陶片が、ネットで売られていたのを見たことがある。高値だったと記憶しているが、「元々どれだけ埋まっていたか分からないので、盗品かどうかも分からない」。
県教委によると、県内には窯跡が300ほどある。多くは江戸時代に使われたという。盗掘被害は07年度以降の10年間で121件が確認されている。07年度は26件。08~12年度は年13~17件。13年度以降は毎年10件未満で16年度は3件に減っているが、根絶には至っていない。
被害にあった窯跡は伊万里、武雄、唐津、多久の4市と有田町の計44カ所。国指定10カ所、県指定2カ所、市町指定5カ所の史跡が含まれる。過去には重機を使って掘り起こす被害もあったという。陶片が高く売れる窯跡が狙われているらしい。
とくに窯跡の多い伊万里市での…