「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法の改正案が29日午後、参院本会議で審議入りした。国連特別報告者が法案の衆院通過直前に人権侵害を懸念する書簡を安倍晋三首相に送ったことを受け、改めて同法の必要性や人権侵害の有無などが議論になる。
参院本会議では冒頭、金田勝年法相が「テロ対策」を強調し、国際組織犯罪防止条約の締結には、国内法整備が必要との法案の趣旨を説明。その後、安倍首相を交えた質疑が行われる。
廃案を目指す民進、共産両党の質問者は、国連特別報告者、ジョセフ・カナタチ氏(マルタ大教授)が法案について、「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」と懸念を表明した書簡に向き合わず、抗議した政府の対応を批判。国連の「立法ガイド」の執筆者である米ノースイースタン大のニコス・パッサス教授(国際刑法)が「テロ対策は条約の目的ではない」と述べていることも踏まえ、政府側の見解を問いただす。
衆院では自民、公明両党が委員会採決を強行し、日本維新の会も賛成に回り可決した。ただ、金田法相の答弁の迷走などが響き、与党が目指す6月18日までの会期内成立は厳しくなっている。(南彰)