■360度動画「いきもの目線」
時速100キロを超えるスピードで獲物を捕らえる俊足ハンターも、赤ちゃんの時は甘えんぼうのちびっ子だ。
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3月生まれの五つ子チーターが見られる動物園・伊豆アニマルキングダム(静岡県東伊豆町)を5月中旬に訪れた。同園のチーター繁殖は3度目。現在、11頭を飼育している。
赤ちゃんたちは、見るからに元気いっぱい。母親に見守られながら、走り回ったり、じゃれ合ったり……。おなかが空くのは同時なのか、お乳を飲む時はずらりと並んでいた。
360度カメラは展示場の土中に埋めた。周りには小さく切った生肉を置いた。チーターと同時に展示場には入れないので、無線映像で見守った。
バックヤードの扉を空けると、この元気な赤ちゃんたちが飛び出して……くると思っていたのだが、なんと1匹も出てこない。声をかけてももちろんダメ。見かねた飼育員の戸嶋愛さん(24)らが後押ししてくれて、やっと出てきた。
ところが、赤ちゃんたちは一斉に鳴き出した。「ピー、ピーピー」。いかにも心細そうな甲高い声。母親の姿が見えなくなったせいらしい。
「母親を入れるしかないですね。カメラは壊されるかもしれませんが」と戸嶋さん。
扉を開けると、母親コリナがサッと登場。バックヤードで子どもたちを気に掛けていたらしい。展示場に入るなり、異常がないかを調べ始めた。
「あっ、カメラに気づいた」。無線映像を見ていた私たちに緊張が走る。母親チーターの顔が、どんどんレンズに迫ってくる。「大丈夫か?」。鼻や口がレンズフィルターに付いて、汚れが盛大に付着したものの、カメラは破壊されず、どうにか撮影は終了した。
チーターはアフリカや中近東の草原などに生息。体長110~150センチで、小さな頭と細くて長い脚と胴体が特徴。ネコ科の動物では唯一、爪を引っ込めることができない。この爪がスパイクの役目を果たし、速く走ることができるという。国際自然保護連合が絶滅危惧種に指定している。(竹谷俊之)