旧学校の教室に並べられたランドセルを見る家族連れ=4月23日、奈良県宇陀市
来春小学校に入学する子どものためのランドセル選び、「ラン活」が本格化している。手作り品で人気の奈良県のメーカーでは、週末に下見客が詰めかけ、地元の観光施設と協力し、町おこしにつなげる動きも出てきた。大手もセミオーダーや親による手作りなど、こだわりに品で対応する。
赤、ピンク、茶……。旧教室の壁に色とりどりのランドセルが飾られていた。「奈良カエデの郷(さと) ひらら」(奈良県宇陀市)で4月下旬にあった、鞄(かばん)工房山本(同県橿原市)のランドセル新作展示会だ。
「紫が一番いい!」。榎本玲海ちゃん(5)が笑顔を見せた。父親の隆二さん(39)=神戸市北区=は「ネットで評判を知り、2時間かけて来た。6年間使うものだから、しっかり選びたい」と話す。
ランドセル商戦は年々早まっており、4月ごろには百貨店やスーパーにランドセルが並ぶ。お気に入りのランドセルを探して店をめぐる「ラン活」という言葉が、雑誌などで取り上げられている。
鞄工房山本は、革の裁断から縫製まで300以上の工程のほとんどを手作りで仕上げる高い技術と、花柄のモチーフを生かしたデザインが人気のメーカーだ。価格は5万円台からあり、中には10万円を超えるものもあるが、6万円台ぐらいが人気という。
昨年は同社のショールームに2万人以上が訪れた。週末は下見の家族連れで周辺道路が渋滞するなど混乱したため、今年は6月10日から始めるネット販売に限定。週末の下見会場も「ひらら」(5月の連休まで)と、本社近くの橿原市昆虫館(5月中旬以降)に変更した。
施設側も集客の機会と期待し、6月4日まで会場となる昆虫館では地元産の野菜を販売し、近隣の牧場やカフェを紹介する地図を配る。土日で前年比約2倍の2千人以上が来るといい、中谷康弘副館長は「地元をアピールするチャンス」と意気込む。
大手も負けてはいない。最大手のセイバン(兵庫県たつの市)は4月に神戸市に4店舗目となる直営店をオープン。子どもの体格や好みを聞いて最適な商品を薦める「ランドセルコンシェルジュ」が接客する。
協和(東京都)では近年、ランドセルの色や柄を選べるインターネット限定のイージーオーダーが人気という。6月には千葉県の工場で親が職人と一緒にランドセルを作るイベントも始める。広報担当者は「一人っ子が増えていることもあり、特別なランドセルをプレゼントしたいと思う親も増えている」と話す。(田中祐也)