新鮮な生サバの刺し身を前に自然と笑みがこぼれていた=6日、大阪市北区、神元敦司撮影
大衆魚として食卓を支えてきたサバの「ブランド化」が進んでいる。傷みやすいことなどで福岡県などを除くと、生で食べるのは敬遠されてきたが、その風景も変わりつつある。
鳥取県北東部、岩美町の網代(あじろ)漁港で、JR西日本がマサバの養殖に取り組む。拠点となる同社の養殖センターの開所を祝う式典が7日あった。生で食べられるブランド魚「お嬢サバ」として売り出す狙いだ。
県によると、地下からしみ出した海水をくみ上げた「井戸海水」を使う。これを使ったマサバの陸上養殖に事業として取り組むのは全国初。海水が砂で濾過(ろか)され、食中毒の原因になるアニサキスなどの寄生虫がつきにくいのが特徴という。
県栽培漁業センターが2012年度から研究していたが、コスト面で事業化の道筋が見えていなかった。JR西日本が市場調査による共同研究を県に提案。同センターから陸上養殖のマサバを買い取り、2年前から消費者の反応や採算性を調べている。
網代漁港に開所したJR西日本の陸上養殖センターは、同社が6千万円をかけて9基の飼育用水槽や7カ所の井戸を整備。県と町が助成した。県栽培漁業センター研究員の水本泰さん(34)は「スタートラインに立ったばかり。想定していなかった課題も出てくるだろうし、まだまだ目が離せない」と話した。
■関西でも生食広がる
農林水産省の統計によると、サバ類(マサバ・ゴマサバ)の漁獲量は1960年代から70年代に大きく伸びた。ピークは78年の162万6千トン。乱獲などの影響で90年代初めには25万~27万トン台に落ち込んだが、漁獲制限などでいくぶん持ち直した。2016年は48万9千トン(概数)という。
養殖は九州などで進み、佐賀県唐津市と九州大が共同研究。マサバを「唐津Qサバ」として出荷している。長崎県でもハーブ入り飼料で育てた「長崎ハーブ鯖」が売り出されている。
福岡県などでは、新鮮な生のサバを胡麻(ごま)じょうゆにつけ込む「胡麻サバ」が人気。関西では主に酢で締めて食されてきたが、最近ではサバを刺し身で出す店もみられる。
サバ専門の料理店「SABAR(サバー)」もその一つ。大阪市北区の大阪天満店でサバの刺し身を初めて味わったという会社員、島田昇さん(52)は「飽きない味。ビールがすすむ」と満足げだ。
SABARを経営する「鯖や」は、京阪神や東京、名古屋などで13店舗を展開する。主に青森県八戸市で水揚げされるサバを厳選。冷凍保存して仕入れる。鳥取の「お嬢サバ」の市場調査も担い、本格的な仕入れも検討するという。
右田孝宣社長(42)は「十分に安全管理されている。サバの概念を良い意味で裏切っていきたい」と話す。週末は予約がいっぱいになる時もあり、30、40代の女性客の比率が高いという。(柳川迅、神元敦司)