専門家会議が示した豊洲市場の追加安全対策案
豊洲市場の安全性を検証してきた東京都の専門家会議は11日、同市場の主要施設の下に盛り土がない状態でも安全を確保するための対策案をまとめた。ただ、汚染を環境基準値以下とする「無害化」は実現困難とした。無害化は都や都議会がかつて約束したもので、小池百合子都知事が対策案をどう評価するかは、築地市場の豊洲移転の可否を巡る判断に影響しそうだ。
特集:豊洲移転問題
同会議の対策案は、一部で土壌がむき出しになった市場の地下部分をコンクリートで覆ったり、敷地内の地下水をくみ上げるポンプ機能を強化して有害物質による汚染濃度を下げたりするもの。工事費は推計35億~80億円。敷地内の地下水では今年、環境基準値の最大100倍の濃度の有害物質が検出されているが、同会議の平田健正座長は「完全に環境基準以下にすることは難しい。時間をかけて徐々に除去していく」と説明した。
都議会は2010年、移転関連予算案を可決する際、豊洲市場開場の条件を「無害化された安全な状態」とする付帯決議をした。無害化について都は11年、「(市場建設前にあった東京ガス工場の)操業に由来する汚染物質が全て除去、浄化され、土壌や地下水中の汚染が環境基準以下になること」と説明している。
このため、11日の専門家会議を傍聴した市場業者らは「約束が違う」などと批判。小池氏は1日の都議会で、無害化に至っていない現状について「約束が守れていないことをおわびする」と陳謝している。ただ、小池氏は無害化を「尊重されるべきもの」とする一方、「ゼロリスクはあり得ない」とも述べており、明確な方針は出していない。(小林恵士)