近鉄あべのハルカス店の林和明店長。おいしく揚げるコツは「揚げすぎないことです」=大阪市阿倍野区、滝沢美穂子撮影
■「まだまだ勝手に関西遺産」
「カツ」と言えば何カツ?
先日、職場で話題になった。トンカツ好きの私は「やっぱりトンカツやね」と後輩とうなずいたが、「ビフカツかも」という上司もいた。
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確かに、関西は豚肉より牛肉文化が根強いと思う。京都出身の私も、肉じゃがやカレーをつくるときは絶対牛肉を使う。そんな牛肉文化の関西で「とんかつKYK」は存在感がある。3人娘が順番に、「K」「Y」「K」とイニシャルを唱える、あの独特なテレビCMのおかげなのか。まずはお店にうかがってみた。
デパ地下にあるデリカKYKの近鉄あべのハルカス店(大阪市阿倍野区)。厨房(ちゅうぼう)にお邪魔すると、林和明店長(45)がカツをあげていた。二つのフライヤー(揚げ物の専用機)がある。厚みがある商品は2段階で調理するためだ。林さんによると、低い方で、中まで火を通し、最後に高い方の油にカツをくぐらせ、表面をカリッと仕上げる。
棒状のジューシーな「ヘレかつ」が一番人気。多いときは1日200本程度をあげるそうだ。「数百種類の中から、本当においしい豚肉を選び抜いています。揚げ物ながら、あっさりと仕上がる油を使っています」。林さんは説明した。
KYKを経営する曲田(まがた)商店の営業担当常務、曲田陽一さん(44)を訪ねた。KYKは、曲田さんの祖父、甚太郎(じんたろう)さんが創業した。甚太郎さんはかなりのアイデアマンだったそうで、終戦直後、大阪市阿倍野区の洋裁店「瓦町洋裁研究所」という建物の軒先で、修理した中古ライターを売るビジネスをスタート。次に、その建物を譲り受けて喫茶店を始める。食糧不足の時代だったが、大豆を焙煎(ばいせん)した「代用コーヒー」でなく、本物のコーヒーを出し人気を博したという。店名は「喫茶KYK」。洋裁店の頭文字に由来する。
その後、高度経済成長の時代を…