奪還作戦が続くイラク北部モスルの旧市街。傾いている尖塔(せんとう)がヌーリ・モスク(光の大モスク)。時折モスク後方で黒煙があがった=12日、仙波理撮影
過激派組織「イスラム国」(IS)が、これまで猛威を振るってきたイラク、シリア両国で劣勢に追い込まれている。どのように民間人の犠牲を抑え、IS支配地域の奪還を進めるのか。掃討作戦を主導する軍関係者に聞いた。
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ISは2014年6月以来、イラク北部モスルを最大拠点としてきたが、現在の支配地域は旧市街のわずか約4平方キロ。イラク軍幹部は朝日新聞の取材に「すぐにでもISを壊滅できるが、民間人の犠牲とインフラの被害を最小限に食い止めるのが重要」と語った。
現在、モスルにいるIS戦闘員は500人程度とみられ、自爆攻撃や狙撃で抵抗している。国連は旧市街に民間人約15万人がいると推定。ISはこれらの民間人を建物内に閉じ込めて「人間の盾」にしているという。旧市街の道路は狭く、イラク軍は装甲車両などを使えない。歩兵が道路や建物を一つ一つ解放する「ストリート戦争をしている状態」(同幹部)だ。
一方、ISが「首都」と称するシリア北部ラッカの奪還作戦を進める有志連合の報道官、ライアン・ディロン米陸軍大佐は朝日新聞の取材に「ラッカは包囲され、解放は近い。IS戦闘員には死ぬか降伏するしか選択肢はない」と指摘した。ラッカに残るIS戦闘員は現在約2500人。ラッカを脱出したIS戦闘員の掃討のため、ラッカ周辺のIS支配地域への空爆も強化したという。
また、ヨルダン国境付近の南部タナフで訓練したシリアの反体制派も、東部の都市や砂漠地帯の対IS掃討作戦に投入される見通しという。
ただ、ISへの攻勢が強まるにつれ、空爆による民間人被害が増えているとの指摘もある。ライアン氏は「民間人被害の疑いがあるすべての案件を深刻に受け止めて調査している。決して非戦闘員を狙ってはいない」と話した。(アルビル〈イラク北部〉=其山史晃、翁長忠雄)