東海道新幹線の遅延の影響で、車内で一夜明かす乗客たち=22日午前3時54分、JR東京駅、北村玲奈撮影
関西で起きた新幹線の停電の影響は、東京など各地に及んだ。JR東海は、東京駅に3本、名古屋駅に1本、新大阪駅に2本の臨時宿泊用「列車ホテル」(休憩列車)を用意。帰りたくても帰れない人たちが、車内で一夜を過ごした。
22日午前3時半ごろ、東京駅16・17番線ホーム。歩く人は少ない。最新型車両「N700A」のグリーン車は、3~4割程度が埋まっていた。普通席は1~2割ほどだ。
窓越しに見えた車内には、スーツ姿の男性が目立った。3席を使って窮屈そうに体を横にしたり、タブレット端末を眺めたり。読書をする人や、アイマスクをして眠る人もいた。
乗客の一人、共立女子大大学院修士課程2年の日野すみ花さん(28)=東京都豊島区=は21日、「小旅行」で静岡県三島市などに行ったという。三島駅を同日午後10時20分ごろに出る「こだま」の指定席を予約していたが、出発は2時間半遅れ。
「イレギュラーな時間、せっかくだから楽しんでしまおうと」。友人に手紙を書くなどして過ごした。東京駅に着いたのは22日午前1時ごろ。「一睡もしてないです」。6時間半後には大学にいなければならない。「このまま行きます」と笑った。
ホームでは売店が臨時オープン。男性店員によると、お茶がよく売れたという。ただ、映像作家の柴田剛さん(42)=東京都江東区=が買ったのは、濃いめのハイボール缶。2本目だという。「明日は仕事が昼からなんで。あ、いや、もう今日か」
大阪からの出張帰り。21日午後8時ごろの列車の指定席を予約していたが、乗ったのは午後9時ごろ。東京には22日午前1時半ごろに着いた。車内でスマートフォンを触りながら、時間を過ごしたという。
新大阪でも東京でも、駅員に怒鳴る人たちの姿を見た。「何が起こっているのかよくわからなかったけど、みんな、ストレスを感じているんだと思った」
午前4時過ぎ、ホームの階段を下りようとしていたのは、埼玉県白岡市に住む保険会社員、大橋一志さん(54)。「始発で帰ります。1時間だけ家に帰って朝飯食って、また東京に来ます。さんざんな日でした」
21日は午後3時に大阪で仕事があり、正午ごろ、東京駅を出発して新大阪に向かった。だが、大雨の影響で列車は3時間20分遅れ。仕事の時間はずらしてもらった。午後8時ごろに仕事を済ませて新大阪駅に行くと、人でごった返していた。並んで待つこと3時間弱。午後11時ごろに出発した列車が東京に着いたのは、22日午前2時半だった。「半分寝て、半分本を読んで過ごした」
帰路、駅と新幹線で過ごした時間は計8時間。すでに空は白んでいる。「もうね、新幹線が嫌いになりましたよ」と語った。(藤原学思)