千葉ジェッツの島田慎二社長
「残業禁止」を徹底して、運営でも成績でもBリーグを引っ張っているクラブが、B1東地区に所属する千葉ジェッツだ。創設6季目ながら、リーグ戦の年間観客動員数が約13万5千人で1位、1試合平均は4500人で、Bリーグ初代チャンピオンに輝いた2位栃木ブレックスの3300人を大きく引き離した。リーグが人気の指標の一つにしているSNSのフォロワー数も計17万人で他クラブを圧倒。1月の全日本総合選手権では強豪を次々と破って初優勝した。今期の売上高は昨期の6億円を大きく超え、9億円を達成する見通しだ。経営手腕が認められ、島田慎二社長(46)は、来季からリーグの副チェアマンを兼任する。そんな島田社長の経営哲学とは?
数百円の預金残高から再建、日本一 Bリーグの敏腕社長
●ボロボロになって働いても意味がない
スポーツ業界ではスタッフが深夜まで残業することは当たり前になっています。そんな中、ジェッツは10~18時半の就業時間を厳守。限られた時間の中でこそ生産性は上がるという考えからです。社員には「23時、24時まで働いてボロボロになって、多少給料が増えても意味がない。1時間の労働対価をほかのクラブの1・5倍にしよう」と呼びかけています。初めの頃は「せっかく仕事しようとしているのに社長自ら邪魔している」と言われましたが、退社時刻になると「帰るぞ!」と電気を消してしまいます。
●仕事は一番忙しい人に頼め
暇な人は仕事を頼まれても、頭が活性化していないから、実行に移るのが遅いんです。忙しい人は短い時間でなんとかこなそうとするから回転も速い。だからうちでは仕事の速い人に仕事が集まる。その分、その人の給料は増やします。
●モノを探している時間はムダ
書類やメールなど、モノを探す時間を合計すると1日1時間は損している。その時間が残業に置き換えられているとすれば、それを圧縮することで労働時間が変わる。だから、整理整頓はとにかく徹底させています。時にはスタッフの机の中、パソコンのメールボックスまで見て、きれいにしろと言っています。
●「好きなことを仕事にしているから」は甘え
スポーツの仕事は人気がありますよね。好きだからやる、多少給料が少なくてもがんばる、休みがなくても構わない……。人気職種はそういう体質に陥りやすい。それを許すのは経営者のおごりと甘えです。うちでは「スポーツビジネス」という言葉は禁止。スポーツだからとか関係なく、「ビジネス」なんです。
●みんなでハッピーに
クラブの理念に「千葉ジェッツを取り巻く全ての人たちと共にハッピーになる」と掲げています。もちろん社員も含まれます。この理念に至ったのは、旅行関係のベンチャー企業を経営していた時の失敗から。上場を目指していたら、社員を働かせすぎてごっそり辞めてしまい、裁判まで起こされました。「こんなんでもうかっても幸せじゃないな」と気づいて「全従業員の物心両面の幸せを追求する会社にする」と方針転換。するとそこからまた伸びたんです。
広報担当の社員、三浦一世さんの話
「社長の机の上は本当にまったく何もないんです。自ら体現しているのがすごい。机やパソコンの中は抜き打ちチェックされるんですが、そもそも見られて困るものはないし、たしかにモノを探す時間は積み重ねれば大きいので、『いつ見られるだろう』という緊張感も悪くない。ついパソコンのデスクトップにファイルをたくさん置いてしまったりすることもありますが、定期的に片付けるようにしています」(伊木緑)