雨でも観光放流を楽しむ見学者=宮ケ瀬ダム
神奈川県相模原市、愛川町、清川村にまたがる宮ケ瀬ダムが人気だ。巨大な構造物に魅せられた愛好家が集まり、絵になる放流の光景をインターネットやテレビで発信。情報がさらに人を呼び、昨年度は観光放流の見学者が過去最高を記録した。周辺自治体も観光資源として期待を高めている。
梅雨入り間もない21日、平日で、しかも強い雨が降るなか、宮ケ瀬ダムには大勢の人が集まっていた。定期的に開催している観光放流がお目当てだ。高さ156メートルの堤の中ほどにある二つの放流口から水がほとばしり出ると、見学に来ていた小学生から「うぁーっ」と歓声が上がった。
宮ケ瀬ダムでは、地域振興を目的に2002年度から観光放流を開始。12~15年度の見学者は5万5千人前後だったが、16年度は7万5千人を超えた。4~11月の毎週水曜日、第2日曜日、第2と第4金曜日に定期放流をするほか、不定期に「イベント放流」を実施。1秒間に30立方メートルの水を6分間放水する。
観光放流が始まった年から何度も通っている相模原市中央区の会社員男性(50)は「ダムの巨大な構造物としての迫力、放流時の『ドドドッ』という重低音が魅力」と話す。
宮ケ瀬ダムを管理する国土交通省・相模川水系広域ダム管理事務所の小川浩広域水管理課長は、「10年ほど前からインターネットで『ダムマニア』が注目され始め、テレビなどの影響もあって一般の人にも定着してきたのでは」と分析する。宮ケ瀬ダムの場合、都心から約50キロというアクセスの良さも強みだ。
ダム上部付近にあるレストラン「レイクサイドカフェ」の名物は「宮ケ瀬ダム放流カレー」(税込み1千円)。ご飯でダム、ルーで水を表現。ご飯に刺したソーセージを引き抜くと、ルーが「放流」される仕組み。マツコ・デラックスさん司会のテレビ番組でも紹介された。
愛川町が昨年、ダム管理事務所の協力を得て夜間に「ナイト放流」を試験実施したところ好評で、今年は10月28日に町外からも参加者を募って本格開催する。町広報担当者は「新たな観光資源として普段と違うダムを見てもらい、何度でも来て欲しい」と期待を寄せる。(須田世紀)