揚げたての赤いポテトチップスの品質をチェックする菊水堂の従業員=八潮市垳
皮も中身も赤い新品種のジャガイモで、赤いポテトチップスを埼玉県八潮市のメーカー「菊水堂」が作った。ネット販売したところ、3千袋が6時間で完売。手応えを感じた同社は、第2弾となる次回の製造・販売を、今月末に予定している。
新しいジャガイモは、長崎県で2009年に開発された「西海31号」。ポリフェノールの一種のアントシアニンという色素を多く含み、赤く発色する。生産農家の1人、雲仙市の宅島俊一さん(38)は、「イモはやや小さめだが、後からじわじわくるうまみがある」と胸を張る。
同県出身の野菜ソムリエ吉開友子さん=東京都世田谷区=が、このイモにほれ込み「Ladyj(レディージェイ)」と命名して販路を探した。そこで出会ったのが、菊水堂の岩井菊之(きくじ)社長(60)。今春、吉開さんが「おもしろいイモがある」と岩井社長に持ちかけ、赤いポテトチップスの製品化につながった。
昨夏の台風被害で北海道産ジャガイモが不作となり、同社のポテトチップスの生産も2割減産が続いている。岩井社長は「原料の仕入れをゼロから考える必要があった。色が赤、しかも北海道産より出荷の早い長崎産ということもあって試してみようと思った」と話す。
赤いジャガイモは、南米原産でいくつかある。ただ、収穫量が少ないため割高となり、ポテトチップスの原料としてほとんど活用されなかった。菊水堂も14年から所沢市の農園と協力して「ノーザンルビー」という赤い品種を加工したポテトチップスを製造しているが、数量は限定的だった。「赤いポテトチップスを1トン規模で作るのは初めての挑戦」と岩井社長は言う。
第1弾として、今月2日に八潮市垳の菊水堂工場の製造ラインに、宅島さんらが収穫した「Ladyj」860キロが投入された。機械で薄くスライスされ、フライヤーから出てきたチップスは濃いピンク色。「油の温度をうまく調整でき、発色は上々」と岩井社長は相好を崩した。
「ポテトチップLadyj」は、65グラム入り5袋で1500円とやや高めの価格。値崩れを防ぐために、販売ルートは熱烈なユーザーが多いネットに限定した。製造前の5月31日正午に社のホームページで予約販売を受け付けると、約6時間で売り切れた。
岩井社長は「食べた方々の感想も聞きながら、赤いポテトチップスを作っていきたい。新商品が軌道に乗れば、不安定だった赤いジャガイモの生産拡大にもつながる」と将来を見据える。予約販売は今月28日正午から。製造は30日。詳細は菊水堂ホームページ(
http://kikusui-do.jp/
)。(米沢信義)