大阪の街なか、駅に近く民家や飲食店が軒を並べる場所で、葬儀場を営まないで――。そんな訴えを、周辺住民が大阪地裁に起こした。敷地は狭く、駐車場もないため霊柩(れいきゅう)車が道路にはみ出す状況といい、「生活の平穏を害されている」と訴えている。12日にあった第1回口頭弁論で、大阪市の葬儀場運営会社側は全面的に争う姿勢を示した。
大手スーパー、ダイエー発祥の地として知られる大阪・千林。京阪電鉄の駅から東へ徒歩1分の場所に葬儀場はある。幅約7メートルの道路沿いで、敷地約56平方メートルの木造2階建て。両隣は民家と集合住宅で、周囲にはラーメン店、衣料品店などが立ち並ぶ。
「葬儀の場は必要だし営業の自由も理解している。けれど、もう少し住民に配慮してもらえたら」と話すのは近くの主婦(52)。19人の原告のうちの1人だ。「窓を開けたり洗濯物を干したりする気にならない」
訴状などによると、運営会社はかつて集会所などで葬儀を営んでいたが、経営者が代わった後の2015年秋、元々八百屋だった物件を購入し、その年の12月に葬儀場にした。原告の住民らは開業1カ月前まで「事務所」と聞かされていたという。住民側は「公道上で遺体の搬入や遺族の見送りがおこなわれ、交通の妨げにもなっている」と主張し営業差し止めを求めている。
葬儀場運営会社の代理人弁護士は「住民側の主張には根拠がないと考えている。営業は正当なもので、全面的に争っていく」としている。
葬祭事業者の団体によると、営業に自治体の許可は不要で、開設地域や設備の基準もないという。(釆沢嘉高)