大阪市港区役所の多目的トイレに掲げられている虹をあしらったプレート
各地の自治体が取り組み始めた性的少数者(LGBT)への配慮。大阪市の吉村洋文市長は、昨年7月の記者会見で「全市的に広げていくべきだ」と明言した。市民に身近な区役所でも、取り組みが進みつつある。
特集:LGBT
■虹のステッカー
市は昨年3月、人権施策の推移や現状を示す指標に、初めて「LGBTなどの性的少数者」の項目を加えた。市政改革プランでも、LGBTなど多様な人たちを受け入れる人材育成を目指すと打ち出した。
この流れのなか、人権施策を担当するダイバーシティ推進室人権企画課は今年2月、各部署の取り組みをまとめた。
各区で進むのが、トランスジェンダー(生まれたときの性別にとらわれずに生きたい人)が入りやすいトイレの普及と、区役所に出すアンケートや応募用紙などの性別欄の見直しだ。いずれも費用や時間があまりかからず、着手しやすい。
市の2月時点のまとめによると、全24区のうち13区が、区役所の多目的トイレの入り口に、性の多様性を象徴する虹をあしらったステッカーなどをつけている。その他の区でも大半が「どなたでもご利用いただけます」などの言葉を添えていた。
港区は3月、区内の事業所に虹のステッカーを提供すると発表。すでに区役所の多目的トイレに貼っていて、区全体に広めたいという。
ただ、区役所の多目的トイレが男女別に分かれている場合は虹の印があっても、トランスジェンダーにとって入りづらい。改善に大がかりな改修が必要で、すぐには難しいという。
そもそも多目的トイレは、身体障害者や乳幼児連れに限らず誰でも利用できるが、トランスジェンダーから「虹の印があると安心する」という意見があり、広がってきた。一方、「虹の印があると、当事者と知られたくないのに知られる」とためらう声もある。
提出書類の性別欄をなくしたり、男女以外に「その他」などの選択肢を加えたりしていたのは16区。窓口の職員に、不必要に性別を確認したり、性別の確認が必要な際に見た目で判断したりしないよう周知している区も多いという。