スペインの高速列車「タルゴ」が、旧ソ連など新興国で相次いで採用されている。線路状態が多少悪くても走れるのが特徴で、投資額を抑えつつ、最高時速200キロ程度の高速化が可能だ。300キロ級の高速車両にも力を入れており、日本の新幹線の手ごわいライバルになるかもしれない。
中央アジア・カザフスタンの首都アスタナの駅に、電気機関車に牽引(けんいん)された真新しい列車が入ってきた。行き先や号車番号はデジタル表示。側面に「カザフスタン製タルゴ」と誇らしげに書かれている。
ホームの反対側にある旧ソ連製の客車は、いまも暖房に石炭を使い、煙突からふんわりと煙が上る。タルゴだけが別世界のようだ。
ほぼ定刻に出発すると、スムーズに加速。新幹線に比べれば揺れは大きいが、気になるほどではない。最高時速は200キロで、冷暖房を完備。各座席には電源もある。上級クラスや身体障害者用の個室にはシャワーも付く。トイレにはペーパータオルがあり、途中で補充もされていた。昔、旧ソ連の列車にあった汚いトイレとは大違いだ。
食堂車には調理場があり、温かい肉料理やスープ、酒など盛りだくさん。ウェートレスは「ダイエット用メニューもありますよ」と笑う。乗務員は航空会社で研修を受け、カザフ語とロシア語のほか英語でも対応する。車内放送も3カ国語だ。乗客のニヤザリエフ・ヌルベックさん(40)は「いつもは車だが、新型列車を試した。静かで乗り心地がいいので列車を増やすよ」と満足そうだった。
カザフスタン鉄道がタルゴの高速車両を投入したのは2012年。前年にアスタナの工場で現地生産を開始し、これまで500両以上をつくった。現在は12以上の路線を走り、所要時間を半分程度に短縮した。昨年は約300万人を運んだ。
隣のウズベキスタンも11年、首都タシケントと古都サマルカンドを結ぶ路線に高速列車を導入。日本の新幹線にも似た動力車付きのタルゴ250で、最高時速は230キロと初期の新幹線を上回る。
昨年はブハラまで延伸し、今後…