ボールを手に高校生にエールを送る大悟さん=東京・新宿の「ルミネtheよしもと」、飯塚悟撮影
お笑いコンビ「千鳥」の大悟さん(37)は笠岡商業高校(岡山)野球部出身の元高校球児だ。5月下旬、東京・新宿のルミネtheよしもとで、高校野球の魅力や、最後の夏の思い出を語ってもらった。
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――岡山・笠岡商業高校で野球部だったそうですね
はい、ショートでした。高校1年のときはピッチャー志望でした。小中まではピッチャーだったので。色んな中学からピッチャーが来ていて、1年生のピッチャー志望の人たちと集まってピッチングをしていたら、僕、カーブが投げられなかったんです。カーブも投げられんやつが高校でピッチャーできないんで、そこからショートですね。サードも少しやりました。打順は確か6番。
野球は小学校のころから。島のソフトボールチームで。エースで4番、キャプテン。中学校もエースで4番、キャプテン。僕よりうまいやつなんかいないと思って島から出たら、僕より下手なやつが1人もいなかったんです。みんな僕よりうまかった。
――どんな高校球児でしたか
たぶん、というか確実に僕が一番下手でした。ショートってほんまは一番うまいやつがやらなだめなんで、ショートが僕じゃなかったら、もっと強かったと思う。しゃべりでレギュラーとってるみたいな。どこの野球部でもいると思うんですけど、どっちかといえばムードメーカーだったんで、レギュラーにしとかなダメみたいな。お笑い好きのメンバーが多かったので部室でしゃべって盛り上げてました。ほんまは僕より後輩の方が上手でした。
エラーはようしてましたね。エラーしたらマウンドに行ってピッチャーに「ごめんなあ」と謝りに行くんです。たいがい僕が最初にエラーしてピッチャーのところ行くと、「大丈夫大丈夫、大悟のエラーは1試合三つまでオッケーにしてるから」と。信頼関係というか僕のエラーには甘かった。みんな当たり前になってました。
――部はどんな雰囲気だったんですか
監督がめちゃくちゃ怖かったです。仕事を遅刻する夢は見ないですけど、いまだに野球部の練習に遅刻する夢は見ます。それくらい厳しかったです。監督はまだ30代でいまの僕より若かった。だからまだまだギラギラの感じ。私生活ではちょっとやんちゃなことしてても監督の前でだけは良い子。
部員はみんな仲良かったです。高校に入ったときの3年はすごい差があって神様みたいな存在。同級生はいまだに交流があります。連絡するのはやっぱり野球部が一番多いですね。
練習は朝1時間くらいして、学校終わって午後3時ごろから夜9時くらいまで。家帰ったら夜の10時でしたね。ほとんど野球してた。正月とお盆くらいしか休みがなかったです。朝練は毎日ではなかったけど、6時くらいからやってました。船が出てなくて島から通えないんで、笠岡市内の団地で姉ちゃんと2人暮らしでした。
――1997年の第79回全国高校野球選手権岡山大会、倉敷市営球場で玉野高校に7―6で負け。大悟さんにとってこれが最後の試合だったんですよね
勝てる試合やったんですよね。僕ね、ショートで3エラーぐらいしてるんですよ。僕がエラーしなかったらたぶん勝ってる試合。この試合の僕の最終打席、振り逃げでセーフになってるんですよ。僕の野球人生の最後は振り逃げでセーフっていう。
この試合って2回戦で玉野は2試合目なんですけど、僕らは初戦で1試合目だったんですよ。僕らは初戦で全員がっちがち。だから「そんなミスする?」みたいなことが起きた。センターが絶対にとれない球に飛びついてボールを後ろにそらしたりとか。日頃じゃあり得ないようなミスばっかり。
――試合終了後のことは覚えてますか
7―6でしょ。追い上げての負けで一番泣ける感じで。試合終わったときはみんな泣いて。ロッカー戻っても「悔しいなあ」と涙涙という感じだったんだけど、バス乗って帰ってる最中に冷静になってきて、「よう考えたらあそこでなんで走ったん?」とか「なんやねんあのエラー」みたいな。みんなでいじりながら、もう笑ってましたね。試合負けても、エラーしてもそれをみんなでいじってわろうてた。
――いまの仕事に野球の経験が生きてることはありますか
野球やっててよかったと思います。礼儀とかあいさつとか。いまだにこの仕事してて「大変ですね」とか言われますけど、高校時代のあのしんどさから比べたら、体力的にいまの方が全然楽です。あと、一生懸命みんなで練習してきてからの夏の大会とかのプレッシャーを振り返ると、あんな経験できることないですね。大事な経験になってます。
エラーはするものなんですけど、「前突っ込んでってのエラーはオッケー、引いて逃げてのエラーはあかん」とよく言われてたんですけど、ほんと人生その通りで。いまのうちに野球部で前向きなエラーをどんどんしてった方がその先に生きてくるんじゃないですかね。
――高校野球の魅力は
技術ももちろんだけど、ほとんど気持ちやと思うんです。それがもろに試合に出るスポーツ。日頃の練習とかで技術を身につけてるというよりかは、こんだけ練習したんやから自信持ってやれるという精神的なもんも鍛えてるんでしょうね。気持ちが前面に出るスポーツだから見てて熱が入る。
――夏の岡山大会は今も見ますか
いまだに気にはなるから、「岡山はどこが出るんだろう」っていう話はします。岡山大会は見られないけど、代表校は気にします。「やっぱここ出てきたんや」とか。(夏の甲子園も)岡山の代表校が出る試合は見ます。いまだに高校野球は好き。倉商(倉敷商)とか倉工(倉敷工)とか理大(岡山理科大付)とか出てくるとユニホームを覚えてるから、「ああ懐かしいな」と。「あのユニホームにびびってたな」っていう。あのユニホーム見ただけで勝てる気がしなかった。
――現役の球児にエールをお願いします
僕みたいに最終打席が振り逃げのやつが言うことじゃないですけど、夏の甲子園出て優勝するのって1チームですから、笑えるのって1校だけ。それになれればいいですけど、ほとんどがそうじゃない。ほんまにいまやってる同級生、チームメートのように人生でそんなに濃く仲間になるやついないんで、そいつらと1日でも長く、厳しいかもしれんけど、野球楽しんで、あとあと「いい仲間を持ったな」と思える部活をやってほしいですね。(聞き手・本間ほのみ)
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大悟 本名・山本大悟。人気お笑いコンビ「千鳥」のボケ担当。1980年3月25日、笠岡市北木島生まれ。県立笠岡商業高校野球部で2年生のときからベンチ入りし、ポジションは遊撃手だった。卒業後、井原市出身で同校の同級生だったノブさんを誘い、2000年に千鳥を結成。現在は数多くのバラエティー番組に出演している。