ナイトプールの利用客が投稿用に撮った写真
日が暮れてから営業する「ナイトプール」が急増中だ。リゾート感のある写真を撮ってインターネット上に投稿できると、若い女性の間で人気に火がついた。客層を広げたい高級ホテルや遊園地が、続々とオープンさせている。
8日午後6時、東京プリンスホテル(東京都港区)のナイトプールが幕を開けた。水着姿の女性たちが水面に浮かせた貝やフラミンゴの形の遊具に座り、東京タワーを背に写真を撮っていた。泳ぐ人はいない。会社員の女性(25)は「泳げないけど、写真を撮るために来ました。SNSにアップすると、反応がすごくある」。
ホテル側も写真映えを意識し、女性ファッション誌の監修でプールサイドを照明で飾った。入場料は女性4200円、男性6千円。昨夏に別の施設で始めて好評で、今夏から広げたという。
ホテルニューオータニも大阪で15日、東京で21日、千葉・幕張で26日から、それぞれナイトプールの営業を始める。東京では2001年に始めたが、人気が出て3年前に広げた。ヤシの木に囲まれたプールサイドでカクテルを提供。DJがダンスミュージックを流すイベントも予定する。
ナイトプールが広まったきっかけは、11年の東日本大震災後に節電対策で始まったサマータイムだった。帰宅が早まるサラリーマンやOLを狙って、東京のホテルが夜のプールをPRしたところ、日焼けの心配をせずに水着で涼めると、若い女性が集まり出した。
客層の中心が中高年の高級ホテルが若者を取り込む好機とみて、さらに力を入れた。「働き方改革」による残業時間の削減や、各地の海岸で飲酒や酒の販売、機器を使った音楽再生の禁止が相次いだことも、追い風になっているようだ。
家族連れが中心で若者が手薄なレジャー施設も、ホテルの成功をみて追随し始めた。テーマパークのハウステンボス(長崎県佐世保市)は昨夏に続いて今年も1日から開催。リゾート施設のラグーナテンボス(愛知県蒲郡市)と温泉旅館の神戸みなと温泉・蓮(れん)(神戸市)は今年初めてオープンした。遊園地のとしまえん(東京都練馬区)は28日、30年ぶりに復活させる。
博報堂ブランドデザイン若者研究所の原田曜平氏は「SNSを通した若者の発信力はとても高く、企業には無視できない存在になっている。ハロウィーンのように巨大な市場に育つ例もある」と指摘する。(森田岳穂)