野球部新聞を手にする科学技術の部員たち=神戸市中央区
兵庫大会で14日に初戦を迎える科学技術(神戸市中央区)に、12年続く「野球部新聞」がある。公式戦や練習試合を問わず、試合ごとに発行し、これまでに1439号を数える。「反省点がわかりやすく、思い出になる」と生徒や保護者に愛されている。
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新聞には時にユーモラスに、時に厳しい見出しが並ぶ。戦評と選手成績が掲載され、試合ごとのMVPや殊勲賞、敢闘賞の選手が発表されている。
執筆するのは、「科技校新聞社記者」という設定だが、井上和男監督(51)が書いているのは「公然の秘密」だ。「グラウンドで怒ってばかりだから、ほめるのが恥ずかしい」と照れ隠しの意味もある。「記者」は井上監督の采配も批判する。
科学技術は2004年に開校した。井上監督は翌春、野球部の公式戦初勝利を祝い、初めて手作りの新聞を発行した。一回限りの予定だったが、次の試合で「屈辱の29失点」を喫し、「怒りの余り」2号を執筆。以来、ほとんど毎試合発行し続けてきた。
サブタイトルは「選手と家庭と指導者をつなぐ専門誌」。新聞に書かれた技術的なポイントや反省点を、生徒に試合後の冷静な頭で復習してもらうのが狙い。藤高秀蔵(しゅうぞう)主将は「バックナンバーはすべて保存している。自分が活躍した試合の見出しは覚えているくらい。冷静に振り返れる新聞の存在は大きい」と話す。保護者も息子の活躍に一喜一憂し、チームをより一層、熱心に応援してくれるようになるという。
1試合分を作るのに少なくとも1時間以上かかる。練習試合が4試合入った週末などは大変だ。それでも週明けの火曜までにはなんとか書き上げている。
井上監督は「何回もやめようと思ったけど、生徒と保護者が楽しみにしていると思うと手が抜けない」と話し、「書いてるのは俺じゃなくて記者やけどな」と真面目な顔で付け加えた。
14日は豊岡こうのとり球場での初戦に臨む。1440号の新聞には、どんな見出しが躍るのか。(森田貴之)