チャンピオン戦では、体重50キロを超える2頭が激しい熱戦を繰り広げた=4日、弘前市
土佐犬が逃げた、というニュースが県内でよく報じられる。そんな獰猛(どうもう)な動物がなぜそれほど飼われているのか、取材すると、青森が全国有数の「闘犬大国」であることが分かった。死闘を繰り広げる愛犬への冷たい視線を変えようと、業界団体が取り組んでいる。
特集:どうぶつ新聞
6月4日、弘前市内の河川敷で、橋桁のふもとに人だかりがあった。若い女性や子どもの姿も見える。
視線の先には、柵で囲まれた直径約4メートルの土俵。体長1メートル超の土佐犬2頭がとっくみ合い、かみつき合っていた。その目は充血し、顔は血で染まる。「押せ押せ!」。血しぶきが点々とする柵の上に設けられたいすから、飼い主が土俵に向かって怒号を飛ばす。
県内で年4回開かれる闘犬大会。30分一本勝負で、鳴いたり、追いかけられて逃げたりしたら負けだ。長い時間を戦って勝った犬ほど、不屈で優秀とされ、勝ち星を重ねて評価が高まれば大相撲の番付と同じく、「横綱」に昇格。県内には現在12頭の横綱がいるが、その中から津軽、南部の両地区の代表同士が戦い、勝者が県の「チャンピオン」となる。他の横綱の挑戦を3度連続で退ければ、晴れて「名犬」の称号を得る。
岩手県洋野町の小学5年、大粒来珠(おおつぶらいたまき)さん(10)は父親の影響で数年前から大会に出場。愛犬が勝利し、「誇らしく思います。頑張ったねと声をかけたい」。観戦した青森市の飲食店経営津島愛さん(35)は「迫力がすごい。何時間でも見ていられる」と話した。