茨城県内の繁殖業者のもとで飼育されていたグレートデーン(動物愛護団体提供)
改正動物愛護法が施行されて4年半。ペットショップや繁殖業者などの適正化を主要課題に掲げて行われた改正でしたが、改正法の施行後も業者の劣悪な飼育環境を巡る問題が後を絶ちません。各地の事例を取材すると、動愛法のあいまいさが、行政指導の現場に混乱をもたらしている状況が見えてきました。
「ケージについては(中略)狭いと云(い)うことはない」「どこをどの様に改善するべきか毎週来ていただいてもアドバイスが出ていないので当方全く理解していない」
ケージの大きさや構造、従業員数が不適切だとして2015年4月、東京都から動物愛護法に基づいて1カ月間の業務停止を命じられた東京都昭島市のペット店。命令が出る直前に、ペット店の経営者が東京都に提出した「弁明書」に記されていた文言だ。
東京都はこの業者に対し、記録が残っている07年度以降、計60回の口頭指導と計5回の文書指導を行っているが結局、根本的な改善が見られないまま業務停止命令を出すことになった。経営者の弁明書と命令に至るまでの経緯からは、東京都による指導が効果的に行われてこなかった現実が透けて見える。
都環境保健衛生課は当時の状況について「飼育施設などの数値規制がなく、指導内容がわかりにくかったところはある。数値規制があれば、明確な数字で指導や処分が出せた」と認める。
自治体による、ペット店や繁殖業者などへの指導は主に「第一種動物取扱業者が遵守(じゅんしゅ)すべき動物の管理の方法等の細目」に基づいて行われる。細目を順守しない業者に対して自治体は、動愛法23条に基づく勧告、命令を出すことになる。
だが、細目の記載はあいまいだ。たとえばケージは「日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有するものとすること」「入れる動物の種類及び数は、ケージ等の構造及び規模に見合ったものとすること」など。このあいまいさが、効果的な行政指導を困難にしている。
福井県は、犬猫約400匹に対して従業員が2人しかいなかった県内の繁殖業者を問題視し、昨年11月以降、繰り返し立ち入り調査を行ってきた。世話が行き届かず、ネグレクトなどの虐待につながることを懸念したほか、清掃する場所を減らす目的で犬猫を狭いスペースに入れっぱなしにしていたことも重く見たという。
犬猫の数を減らすか従業員を増やすかするよう指導を重ねているが、「動愛法にはあいまいな表現しかない。従業員1人あたりの適正な飼育数に関する基準がなく、数字を示しての指導ができない。一つのケージに2、3匹の犬が入っている状況が動愛法違反にあたるのかどうかの判断も県にはできない」(県医薬食品・衛生課)と悩む。
なお、この業者については、公益社団法人「日本動物福祉協会」が、動愛法違反(虐待)などの疑いで1日に刑事告発している。
茨城県内では2月下旬、グレー…