ホワイトタイガーの飼育舎前に設置された看板=大牟田市動物園提供
「今後、ホワイトタイガーは、飼育しません」。福岡県大牟田市の市動物園に置かれた宣言文入りの看板がツイッターで話題になっている。人間の都合に振り回される動物の事情を知ってほしいと、園のスタッフたちが手がけたものだ。
看板は園が今年2月、メスのホワイトタイガー「ホワイティ」の飼育舎前に設置した。白い毛並みを維持するため、人工的に近親交配が進められてきた経緯などをイラスト付きで解説している。
今月に入ってから看板の写真がツイートされると、「動物が置かれた現実を考えさせられる」などと、大きな反響を呼んだ。
園などによると、ホワイトタイガーはインドなどに生息するベンガルトラの白変種で、1950年代に初めて見つかったとされる。国内でも各地の動物園が飼育しているが、近親交配の結果、関節の形成不全といった障害がある個体が生まれたり、一般的なトラより短命だったりすることが少なくない。
こうした実情を知ってもらいたいと、ホワイティを世話する斉藤礼(さいとうあや)さん(23)ら3人の飼育員が看板を発案。1カ月ほどかけ完成させた。
斉藤さんによると、ホワイティは17歳で、人間に当てはめれば80歳の高齢だ。視線が正常よりも内側を向く内斜視などの持病があることも踏まえ、園として別のホワイトタイガーを迎え入れない方針を決めたという。ホワイティは、毎月の採血や食事管理を通じ、元気に暮らしている。
「看板を見て、動物と人間の関わりについて考えてくれればうれしい」と斉藤さんは話した。(神戸郁人)