被告がお見合いサイトに掲載していたとされる制服姿のイラスト。プロフィル欄には「医師(勤務医)」などと記されていたという
■きょうも傍聴席にいます。
お見合いサイトで「医師資格をもつ元厚労省技官」と称する男と出会った女性は、結婚して幸せな家庭を築けると信じて、金を貸し続けた。気付けば総額5千万円超。だが、男は実は結婚離婚を繰り返し、ほかにも複数の女性から金をだまし取っていた結婚詐欺師だった――。
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5月19日、名古屋地裁の903号法廷。住居不定、無職の被告の男(39)は眼鏡をかけ、上下黒色の服で判決に臨んだ。中肉中背の外見からは、女性に「モテる」ようには見えない。
起訴状によると、被告は2015年5月~16年3月、「防衛省と機械を開発中で米軍に売却する渡航費が必要だ」などとうそをつき、交際女性から現金計約850万円をだまし取ったとされる。
検察側の冒頭陳述や取材から、事件をたどる。
男と被害女性は07年5月ごろ、お見合いサイトで出会った。男は女性に対し、過去に医師免許を取得し「厚生労働省厚生医務技官」として働いたことがあるなどと、経歴や職業を詐称。交際を始めてからも「大学の医学部に進学することになった」などとうそを重ねた。
実際、男は実在する学会の会員で、周囲に「研究所所属の医師」と信じ込ませ、大学教授らと交際していた。女性からだまし取った金で大学教授らと飲食をともにし、一緒に撮った写真などを女性に見せて、信用させていた。女性の両親に会いに行ったこともあったという。
弁護側の被告人質問。
弁護人「最初に女性からお金を借りたのはいつ」
被告「はっきり覚えていない。お世話になっている方々と付き合うため。皆さん、社会的に成功している人ばかり。私みたいな人間が一緒にいるのは恥ずかしいと思うようになり、お金を借りるようになった」
弁護人「女性からお金を何回ぐらい借りた」