彫り師が握るグリップと呼ばれる器具の先端に取り付けられた針が高速で上下に動き、皮膚を刺しながら色をつけていく=大阪市内、遠藤真梨撮影
若い世代を中心に、アートやファッションとして広がったタトゥー(入れ墨)。一方でタトゥーを彫る行為への規制も強まり、彫り師が医師法違反の罪に問われた裁判が、大阪地裁で大詰めを迎えている。身体に手を加える「アート」を、どのように考えるか。
衆院議員会館に6月、国会議員とタトゥーの彫り師、愛好家ら約100人が集まった。
「日本のタトゥーは海外でも高く評価されている」「彫り師の仕事に誇りを持っている」
院内集会を主催したのは一般社団法人「SAVE TATTOOING」。大阪府吹田市の彫り師、増田太輝さん(29)が2年前、医師免許がないのに客にタトゥーを施したとして医師法違反の罪で略式起訴されたのをきっかけにできた。増田さんは「タトゥーを彫る行為は犯罪ではない」として略式命令ではなく正式な裁判を求めた。大阪地裁の裁判では21日、検察側が罰金30万円を求刑し、近く判決が言い渡される。
厚生労働省は2001年、タトゥーと同じ手法で眉やアイラインを描く「アートメイク」でトラブルが相次いだのを背景に、「針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為」は医師にしかできないと通達。タトゥーを彫る行為は医師にのみ許される、と位置づけた。
一方、海外からの旅行者の増加などもふまえ、タトゥーを入れた人たちを広く受け入れようとする政策の転換もある。観光庁は昨年、タトゥーのある外国人が温泉などの入浴施設を利用できるよう配慮を求める文書を公表した。担当者は「彫る理由はさまざま。反社会的勢力でなければ日本人も対象になる」という。
彫り師たちが提唱するのは、ライセンス制や登録制といった、医師法とは異なる枠組み。衛生面などの基準を設け、講習などを経た人の彫り師としての活動を公認するというものだ。
院内集会に出た初鹿明博衆院議員(民進)は「タトゥー愛好者は多いし、20年の東京五輪にはタトゥーを入れた選手も参加するだろう。彫り師を摘発しても、衛生上問題があるヤミの彫り師を地下に潜らせるだけだ」と話す。
人がタトゥーを入れる経緯は一…