21日の常翔学園戦で力投する北野の牧野斗威君=大阪府吹田市の万博球場
目の前の打者を打ち取ることと、人類の謎を解明するために必要な根性は一緒だ――。大阪大会に挑んでいる北野のエース牧野斗威(とうい)君(3年)はそう思ってマウンドに立つ。大会注目左腕の夢は、宇宙誕生の謎を解明することだ。
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北野は府内でも有数の進学校。牧野君は、140キロ近い直球とキレのあるスライダーを武器に、昨秋の府大会でチームをベスト8に導き、注目を集めるようになった。
この夏の大阪大会も9日の初戦は5回までノーヒットの8回2失点。21日の3回戦も7回を投げて無失点の好投を見せる。
トレードマークの青緑色のめがねをかけ、力強く投げ込んでいく。走者を背負うたび、自分の中のギアを上げるが、高めるのは気持ちだけ。フォームや力加減は変えない。「夏は炎天下の登板が続く。同じ姿勢で投げ続けることができれば、体力の消耗が少ないから」
夢は京都大に進学し、宇宙誕生の謎を解明することだ。中学生の時、宇宙に関する本を読んで興味を持った。謎が多いところに魅力を感じるという。
野球は小学1年で始めてからずっと投手だ。「盛り上がるのも、点が取られるのも投手次第だから楽しい」と思っていた。
昨年末、大阪選抜のメンバーに選ばれ、今春の選抜大会準優勝の履正社のエース、竹田祐君(3年)に出会い刺激を受けた。失点しても勝てば良いと思っていた自分と違い、竹田君は試合内容にもこだわっていた。「チームを引っ張り、走者が出たら返さないのがエース」。自覚が強まった。
北野の下校時間は午後6時15分。他部との共有で、外野までグラウンドが使えるのは木曜だけ。限られた環境だが、最後の夏に向け、課題はフォームの安定に定めた。走り込みで体力をつけつつ、下半身のトレーニングに取り組んだ。
試合に勝つためには27個のアウトが必要だ。一つのアウトを取るためにはいくつも投球が必要。宇宙の膨大な謎を一つ一つ解明することは、野球と似ていると感じる。「生半可な気持ちでは宇宙の謎は解明できない。野球で身につけた集中力はきっと役に立つ」
まずはこの夏、「野球という宇宙」に向き合う。次は23日の4回戦で大冠と対戦する。(半田尚子)