関東大震災の被災地を高台から視察する皇太子時代の昭和天皇(右)=1923年10月10日、横浜市、朝日新聞社撮影
■てんでんこ 皇室と震災・第2部13
月刊誌「文芸春秋」1995年3月号に、文芸評論家・江藤淳(えとうじゅん)氏の「皇室にあえて問う」という文が載った。阪神・淡路大震災にあたっての皇室の対応を批判したものだ。
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江藤氏は23(大正12)年の関東大震災の際、大正天皇の摂政宮だった裕仁皇太子(のちの昭和天皇)が震災発生当日の9月1日は一睡もせず、翌2日には1千万円を政府に与えたことなどを紹介。「当時の皇室は、わずか三週間の間にまさに畳みかけるように次々と災害への対応をしておられる。……大災害にあっては天皇御自ら率先して国民を慰撫(いぶ)し、妃殿下方までが総動員で繃帯(ほうたい)や着物まで縫う。……皇室の存在を示し、皇室は日本にとってなくてはならないものだという印象を国民に与えることが、いかに重要であるかを……十分に知っておられたのです」
江藤氏は、震災後の皇太子ご夫妻の中東訪問も批判する。江藤氏の本名は江頭淳夫(えがしらあつお)。叔父は水俣病原因企業チッソの江頭豊(えがしらゆたか)・元社長で、その孫にあたるのが93年に皇太子さまと結婚した雅子さま。姻戚関係となった中で言及したことになる。ご夫妻が中東でベドウィンの踊りを鑑賞し、サッカーを観戦したことに触れ「見るべきはサッカーなのか。われわれ国民が皇室に見ていただきたいのは……神戸の被災者たちの姿なのです」と迫った。
さらに、「何もひざまずく必要…
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